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人里から遠く離れた小さな山に、多くのゆっくりが暮らす森がある。 日当たりの良い広場があり、きれいな川が流れ、木の実を付ける広葉樹で構成されており、 小鳥は囀り、げっ歯類以上の大きさの哺乳類はおらず、妖怪も人間も足を踏み入れないというそこは、ゆっくり達の理想郷であった。 そんな美しい森に、とても生存本能の強いゆっくりぱちゅりーが居た。 他のゆっくりぱちゅりーは自らの運命…先天的に病弱で、長生きする事は叶わない自らの体質を受け入れている。 だが流石にこのゆっちゅりーは格が違った。自らの運命を自らの手で(ゆっくりなので手は無いが)変えようと強く思っていた。 ある日ゆちゅりーが短時間の散歩を楽しんでいると、木の洞に詰まって身動きが取れなくなっているゆっくりまりさがいた。 ふと、ゆちゅりーの拙い思考回路があるアイデアを生み出した。 まりさ種はゆっくり達の中でも殊に活動的だ。その点では、ゆちゅりーの理想と言ってもいい。 そのゆまりさの健康で活動的な肉体を得れば、自分もああなれるのではないか。 無論、肉体を手に入れると言っても脳を移植する訳ではない。元よりゆっくりにそのような知識は無い。 あるのは本能だけ。故に、他者の肉体を得る方法はただ一つ。―――食べる事だけだ。 ゆちゅりーは虚ろな表情で、ゆっくりとゆまりさににじり寄る。 「ゆっ!たすけてくれるの!!?ゆっくりひっぱってね!!!」 「…………」 ゆちゅりーは答えない。というか、聞こえていない。今のゆちゅりーにあるのは強烈なまでの食欲だけだ。 「ど、どうしたの!!?さっさとたすけてね!!!」 「…………」 偶然にも周囲にゆっくりの姿は無い。まるでゆっくりの神があるいは悪魔がセッティングしたかのような状況である。 もうゆまりさの体温すら感じられる程に肉薄している。耳障りな雑音も聞こえない。 ぶよぶよと震える皮は美味そうとしか考えられない。 普段は友愛を喚起させられる体臭も今では食欲をそそる香りだ。 肌身離さずかぶっている帽子や、美しい金色の髪に至るまでが御馳走に見える。 そして、 「ゆ゛う゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!や゛め゛で!!!や゛め゛でよ゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!」 思い切り良く頬に食らいついた。その瞬間、口の中をかつて無いほどの至福が駆け抜けた。 ―――すごい。こんなにまりさがおいしいなんて。ゆめみたい。 全身が四散しそうな程衝撃的な味は、ゆちゅりーを虜にした。 一心不乱にゆまりさを喰らう。否、このゆちゅりーはゆまりさをただ食っているのではない。愛しているのだ。 今のゆちゅりーの最大限の愛情表現こそがこの共食いという最も恐るべき行為だった。 「う゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!どうじで!どうじでごん゛な゛ごどずる゛の゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!」 一口齧る毎に、一声絶叫される毎に、ゆちゅりーは心身共に活力に満ちて行くのを実感していた。 このような感覚は生まれて初めてだった。母の蔓に生まれ、目を覚ました時ですらここまでの爽快感は無かった。 「ぐがが……お゛ぼぉ゛……ゆ゛……ゆ゛ぐぐ……ゆ゛っぐり゛ざぜでね゛!!!!!」 それがこのゆまりさの最期の叫びだった。後はただゆまりさの残骸を余さず食う音だけが響いていた。 「むきゅぅーん……」 ゆちゅりーは涙した。一時の激欲に身を任せて友を食べてしまった自責の念で。 もう二度と自分の知らない場所にまで連れて行ってくれた相手と会えない悲しみで。 そして、身も心もかつてない程のゆっくりに満ち溢れている喜びで。 もっと。もっとこのエネルギーが欲しい。友を喪うのは悲しいけれど、それを遥かに上回る喜びが得られるのなら。 「だから……!(福山潤の声で)」 翌日の朝、ゆちゅりーは森の中を全速力で駆け回っていた。恐らくゆっくりまりさと同等の速度だろう。 ゆちゅりーは感動している。速く走れるとはこんなに素晴らしいことなのか。それもこれもまりさと一つになったお陰だ。 もっとだ。もっと食べれば、もっと生きていられる。もっとゆっくりできる。そう、食えば食う程―――強くなる。 ……新たな餌を、発見した。 数年後、そこにはかつての貧弱さなど微塵も感じさせない力強いゆっちゅりーが居た。 体躯は通常のゆっくりより一回りも二回りも大きく、その眼力に他のゆっくりはただ畏れるしかなかった。 今やゆっくりれみりゃさえもゆっちゅりーには近付かない。 ぱちゅりー種でありながら餌を横取りされたゆっくりれみりゃの群れ十匹を返り討ちにするような怪物に逆らう程、ゆっくりも馬鹿ではないのだ。 そう。今やこのゆっちゅりーはこの森に住まうゆっくり達の王なのである。 好きな時に好きなゆっくりと共にゆっくりし、好きな時に好きなゆっくりを食べる。それが王の在り方だった。 だが、王はこの生活にも飽きてきた。以前とは比較にならない位強大な生命力を得た王にとって、通常のゆっくりでは物足りないのだ。 もっと。もっと大きくて栄養のある餌が欲しい。際限無い欲望を持つという点では、人間の王とゆっくりの王は大差無かった。 決意するのに、そう時間はかからなかった。王はこの楽園を捨て、新天地へ向かう事を決意した。 大丈夫。今の自分は強い。ゆっくりれみりゃやゆっくりフランでさえ自分を恐れて近付かない程に。 どんな敵が現れようと打ち倒し、食べるだけだ。 そうして王は向かった。幻想郷の中心部にある人間の里へ。 森を出て三時間、里の外れの外れにある小さな集落を発見した。 地面にしゃがみ込み何かをしている人間が居る。第一村人発見である。王はこいつが記念すべき最初の人間だと決定した。 射程距離まで音を立てず慎重に移動する。まだだ。あと十ym(ゆっくりメートル)。あと八ym、六ym、よし今だ―――! その瞬間、人間がこちらに気付いた。だが構うものか。後は飛び掛り、組み伏せ、食い尽くすだけなのだから。だが…… 王は知らなかった。ゆっくりと人間など、同じような物だと慢心しきっていた。 世界で最も強かったのはゆっくりフランで、自分はそれ以上の生物なのだと勘違いしきっていたのだ。 そう、つまり―――ゆっくり内での序列がどうあれ、ゆっくりである限り人間の食料に過ぎない事をまるでワカっていなかった。 「ごらー!おらの畑で何しとるだァー!!」 食い物である筈の人間はそう叫ぶと、手に持った棒切れを振りかざし、王の頭に振り下ろした。 ぐしゃり。 決定的な音を、王は確かに聞いた。懐かしい感覚。自分の意識から立ち昇る死の匂い。 嫌だ。せっかく生きられるようになったんだ。こんな絶望から逃げる為に同胞まで食ったんだ。 助けて、助けて、助けてまりさ。れいむ。ありす。にとり。うどんげ。にいと。あやや。てんこ。ちぇん。さくぽ。れみりゃ。フラン。 助けろ!私は、私はお前らの王なんだぞ……!! と、ありえない光景を見た。森に居た多くの仲間達が自分を見ている。ああ、やっぱり助けに来てくれた……皆! 「たすけろ、だってさ」 「おお、いやだいやだ」 大勢の仲間が、嫌な笑顔でこちらを見ていた。 どうしてこんな顔を向けられるんだろう。 どうしてこんな事になってしまったんだろう。 わたしはただ、みんなとゆっくりしたかっただけなのに…… 「おーい母ちゃん。こんなもんが畑を荒らしとったぞー」 「あんらーお前さんそりゃ『ゆっくり』だよぉ。それを里に持っていくと高く売れるんだわー」 「へぇそうかい。そいじゃちょっくら売ってくらぁ。おぅ、種蒔きは代わりにやっといてくれよ」 「そんな事言ってまた遊んでくるんじゃないんだろうね!いやだよこの間みたいに土産とか言ってエロ同人誌五十冊も買って来るのは」 「へっへっへ、もうあんな事はしねえよぉ。んじゃ行って来る」 「全く。気を付けて行って来てなあ!最近は妖怪が出るとか言うけんねー!」 「おおう!妖怪なんざ俺のコブラツイストでボッコボコにしちゃるけん!」 「調子いい事言うんだから。妖怪になんて勝てる訳……おや、何だいこりゃあ」 彼女の足元には文字が刻まれていた。そこはかつての王が息絶えた場所だ。そこにはこう書かれていた。 「ゆっくりしていってね!!!」 DEAD END
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ゆっくり虐待士 このSSにはドス系を含みます。 俺設定ふんだんに使ってます。 初SSで文才0の俺なので駄文になる可能性大です 私はゆっくり虐待士養成学校というところを卒業したばかりの虐待士見習いの田村というものです その学校はゆっくり加工所とゆっくり関連の各種企業が資金と技術を提供しあって作り上げた学校で校長には、 八雲 紫氏が担当することになった(と言ってもほとんど藍さんがしてたようなものだが)。 そしてこの学校は特殊でゆっくりが冬眠する冬に卒業式を挙げる。なんでもゆっくりたちが冬眠中なので色々と準備して春から活動したほうが都合がいいとのこと。 ちなみに河童や加工所などの製品のレンタルも自由に出きるので虐待の幅はかなり広がるのも利点である。 そして卒業したときに関連企業への就職、村の用心棒などの進路があったが、私はあえて故郷に戻ることにした。 理由は両親がゆっくりの被害にあってるからである。 村へ着くと幼馴染の虐待お兄さん2人が出迎えた、なんでも私の着く2週間前にドスまりさとそれに金魚のフンのようについてきた群れが来た。 条約・・・とか色々言っていたが村長の顔色を見るとかなりひどい条約だと分かったらしい。 そこで正義感の強い2人はドスへ戦いを挑もうとしたが村人に「今戦えばこっちにも死人が出る」と言われとめられたらしい。 今ではおうち宣言されて12家族中3家族の家にゆっくりが住み着いてるらしい。 このままではゆっくりに村をつぶされる…と2人が嘆いてたところ私が帰ってきたということだ。 「なんとかできないか?」とお兄さんAが私に聞いた。 私は首を縦に振りながら「なんとでもなる」と答えた。 今は冬眠中なので巣を見つけてさっさと退治してしまうのもいいがそれだとこの2人は満足しないことを知っていた。 なのでまずは村をゆっくりに入れないようにしようと考えた。 ~会議中~ 虐待お兄さんA(以後A)「どうやってゆっくりたちを村に入れないようにするんだ?」 田村(以後田)「簡単なことです。まずは村の周りに幅25M、深さ5Mの溝作ってください」 虐待お兄さんB(以後B)「ふむふむ」 田「それと近くの川とその溝を繋げて、違う川にまた繋げてください」 B「その川のバイパスと今回の虐待は何の関係性が?」 田「それは春になってからのお楽しみです」 ~一方冬眠中の巣~ 「ゆゆ、はるになったらあのにんげんのさとにいくよ!!」とドスが言い出してる。 周りも「にんげんはれいむたちをゆっくりさせるためだけのそんざいだよ!!」やら「まりささまのゆっくりぷれいすをかしてやってるんだから春に返してもらんだぜ!!」 とか言っている。 春にはまだ遠いというのに・・・さすが餡子脳。 そして準備が始まった。堀のほうも完成し、おうち宣言してたゆっくり一家30匹ほどを拘束した。こいつらも後々使い道があるので今は生かしておく。 そして最後の仕上げのため私は山に入った。もちろんドスの巣に用はない。 狙いはドスの巣の近くにある「うーパックの巣」である。 この作戦の穴は「空からの攻撃や進入に弱い」ということだ。 消すにしても、利用するにしてもドスのところにうーパックを置いておくのは危険である。 そして巣は分からないのでお兄さんに案内を頼んだ。 「うーうー」巣から泣き声がする。 さて交渉に移りますか。 うーパックの巣に入った。もちろん威嚇してるがお菓子をあげると警戒しなくなった。 そしてうーパックたちに「いい契約があるよ」というとあっさり承諾した。ちなみに以下の文が契約である。 ①人間はうーパックたちは人里に寮を用意する。 ②うーパックたちは人間から預かった荷物を輸送し、その報酬は里から餌として支払われる。 というもの。 もともと契約という言葉に弱いのと餌と家と何より安全が約束されるこの契約を前にうーぱっくたちは迷いはなかった。 そして早速空き家を寮として開放した。後のうーぱっくの郵便局、略して「うー便局」の誕生である。 さて…私も準備しますか、と早速虐待士連盟に打診した。 虐待士連盟…それは養成学校から卒業した虐待士たちには欠かせない施設である。 虐待道具の貸し出しや購入、企業の最新虐待アイテム情報や虐待士同士の交流ができる。 そこで私は以下のアイテムを借りた(ちなみにレンタル代はどんなに借りても一律3000円) 河童印の拡声器 河童印の水中活動キットX2 大型扇風機 それとは別に購入したもの(全部で3200円) 巫女もびっくりホーミングアロー20箱(12本入り) 拡散型わさび玉、からし玉X5個ずつ そしてすべての準備を終わり、「春ですよ~」と弾幕ばら撒く妖精がフラフラと飛び回ってた。 ドスたちはうろたえていた。地続きだった村は川に囲まれていたのだ。だか声の大きいドスは叫んだ。 「おいじじいどうじでむら゛にはい゛れ゛な゛いの゛!!」 拡声器で村長の代わりに私が応じた「気が付いたら川ができてたんですよ、ゆっくり理解してねっ!!」 さすが河童の開発品だな、よく声は届く。 「ゆゆっ!まりさがむらをせいあつするんだぜ」と意気込んで帽子を水に浮かべ進んできた。 しかしまりさたちは知らない…水中に潜む2つの悪魔の存在を… そして突然悪魔が牙をむいた。水中のお兄さんがこっそりまりさの帽子を引っ張った。 「ゆっくりすすむよっ!!…ゆぐぅぅぅぶくぶく」 水中に引き込まれたまりさは死ぬ直前まで何が起きたか分からなかった。 そして死ぬ直前にまりさ見たのは、河童印の酸素ボンベを背中に背負った2人の人間である。 「もっと…ゆっくりしたかった…」と心の中で言いながら溶けて消滅した。 そしていつまでも上がってこないまりさを心配するドス。 しかしその悪魔は水上に顔を出した…死んだまりさの帽子を掴んで。 しばらくの沈黙、そして餡子脳でもここで分かった、まりさは死んだと。 「「「「ゆががががががが!!」」」」と発狂するゆっくりたち 「ばり゛ざーゆ゛ぐり゛ででぎでよ゛ー!!」と叫ぶれいむ。おそらくつがいだろうか。 ドスは放心状態である。 なんであのにんげんはまりさのぼうしをもってるの? どうしてあんなりうれしそうなの? どうしてまりさは出てこないの? どうして…とぶつぶつとうわごとを言っていた そして仲間のまりさたちが「「「「ゆっくりまりさのかたきをとるよっ!!!」」」」といいながら帽子を水に浮かべて2人の悪魔へ突撃した。 悪魔…もとい虐待お兄さんたちもそれに気づきナイフを片手にいつもの台詞を叫んだ「「ヒッハァー虐待だっ!!!」」 お兄さんたちは本体はあえて斬らず帽子に穴を開けていく。 「お゛に゛い゛ざん゛だずげでぐれ゛だぜ」 「ばり゛ざのお゛ぼう゛じがっ!!!」 「い゛ま゛だずげでぐれだら゛ゆ゛る゛じであ゛げる゛ん゛だぜっ!」 などと戯言が聞こえているが気にしない悪魔たちは全ての帽子に切れ目を入れたらそのまままた水中に潜った。 「どずっ!ばや゛ぐあ゛い゛づら゛や゛っ゛げでね゛っ!!」最初につがいを失ったれいむがドスに叫んだ。 「ゆ!わかったよ、みんなはなれてね」どうやらドスパーク発射体制に入ったようだ。 「ゆゆ!こうさんするならいまのうちだねーわかるよー」と群れのちぇんが言ってたが田村は涼しい顔をしていた。 ドスは降参しないと見るや否や「ゆっくりしねっ!!!」と叫びながら発射した。 水中にいるお兄さんたちには当たるわけはなく通り過ぎた。 しかし届く前にドスパークはみるみる小さくなり届く前に消えた。 村人は何が起きたか分からないと思ったのか田村が説明した。 「ドスパークの有効射程はせいぜい16M程度が限界だからこの25Mの溝越しに撃っても届くわけがないよ」 ドスに聞こえるようにわざわざ拡声器で解説した。 これは加工所の研究データによるもので平均15M最長で20Mぐらいだったが25Mを超える距離は出せないの判明してる。 群れの中はパニック状態である。 すかさず田村はドスを罵倒した。 「それにしても、ドスパークを無駄うちして楽しいの?馬鹿なの?死ぬの?」 少しずつだかドスの顔が赤くなってきた。 「仲間のまりさが死んだのに後ろでびくびくおびえてるドスはゆっくり死ぬといいよ」 この一言がきっかけになったのか「ゆ゛っ゛ぐり゛じね゛っ!!!」と叫びながら帽子を浮かべて突撃してきた。 ドスは勝利を確信していた。ゆっくりオーラという特殊能力で悪魔たちをゆっくりさせて向こうの村に行ってゆっくりするんだ。 しかし悪魔たちは帽子に取り付きナイフで切り取りを始めた 「やめてねっ!まりさのぼうしをきらないでねっ!」と言いながらオーラを使った。 しかし悪魔たちはゆっくりせずに作業を進めてる。 「どう゛じでゆ゛っ゛ぐり゛じな゛い゛の゛おぉぉぉ!!」 その理由も田村が解説した。 「ドスまりさのゆっくりオーラも確かに厄介だけど対策はできる。まずは水中の人間には通用しないこと、それと風が吹いてるとオーラが届かないことだね。」 ドスオーラの正体は未だ調査中だが先ほどの2つの方法で無力化できるのは加工所調べで確かである。 お兄さんたちは水中だし、私は大型扇風機で風を送ってるのでゆっくりしなくて済んでる。 そうこうしてるうちにどんどん水没してくドス、それを見て邪悪な笑みをこぼす2人の悪魔…。 では…私も虐待しますか~。 と冒頭で生かしておいたゆっくりたちを連れてきた。 「ここから出せー!」やら「ゆっくりできないぃぃ」などと言ってるが無視。 そしてもうひとつ…村の備品の迎撃用大砲が一門。 頭の賢い読者様ならお分かりでしょう。 つまりこの大砲でゆっくりを射出して地上に呆然としてるゆっくりたちに返すのだ。 さて一発目を装填します。「ゆゆっ!助けてくれるの?ゆっくりありがとう」 どーん 発射しましたが…残念ながら群れの少し前に餡子をぶちまけて散っただけであった。 最初はびっくりしてたゆっくりだがそこに残った髪の毛とリボン(射出したのはれいむ種だった)を見て何が飛んできたか分かったらしくさらにパニック状態になった。 そして2発目からはどんどん撃っていった…。 まりさ種は水しぶきを上げながら粉々になった。 ようむ種は木に激突して餡子をばら撒いて果てた。 ちぇん種は地上のゆっくりたちに派手に激突して汚い花火を上げた。 そうこうしてる内にゆっくりたちは沈みゆくドスまりさだけとなった。 田村は「何か言い残すことはない?」と告げた。 ドスは「どうじでごん゛な゛ごどを゛ずる゛の゛」と叫んでる。 うーんうーんと考える振りをして田村は答えた。 「私の両親を困らせたから…かな」と。 そしてドスは「もっと…ゆっくり…したぶくぶぐぶぐ…」と沈んだ。 ドス攻防戦(?)はドスたちが壊滅する形で終息した。 村は平和になっただけでなく、うー便局や周りの水路、そしてドスたちの残した帽子などの生地により村に活気があふれた。 お兄さんAはうー便局の局長となりうーぱっくたちに調教やら運営をしている。(虐待お兄さんだが制裁派なので何もしないうーぱっくたちは比較的に愛でていた) お兄さんBは私のような虐待士になるべく養成学校への入学試験のために猛勉強している。 そして私は、村の救世主ということで個別の館が建設されてそこで虐待のデータ取りや次の虐待依頼などの募集などをしてる日々です。 今日も平和だな~とつぶやく私と「「「「「ゆっくりできないよ…」」」」と叫ぶゆっくりたちだった。 あとがき ここまで見ていただいてありがとうございました。 この田村は私のSSではレギュラーキャラにしようと思います。 それと…田村の性別は読者様が想像できるように男でも女でも違和感のないように文にしました。 続編は今書いてますのでしばらくお待ちを・・・。 このSSに感想を付ける
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名無しなんださんからのお題「カイオウ」 先に名前書いておくんでみんなにげてー by バスケの人 「うー!」 可愛らしい鳴き声を放つのはうーぱっく。 現在海の上を飛行中である。どうみてもごく普通のうーぱっく。 しいて普通と違う所をあげるとすれば、体長3m以上なことぐらいだろう その中に一人の男が寝そべっていた。 がっしりとした体の男だった。 うーぱっくの下には、何かが水面を泳いでいた。 それは帽子の上に乗り、オールを口で器用に動かして進んでいるまりさだった。 「しかし遠すぎるだろ。その修羅の国とやら。」 「うーぱっくがいてよかったね!!!」 この1人と一匹は海に浮かぶ島に向けて現在移動中だった。 事の発端はまりさからの話だった。 なんでもゆっくりも人もゆっくりできない国が海の向こうにあるという。 その国の名は『修羅の国』ゆっくりは生れてからずっと厳しい訓練をさせられ、大人になるまでの生存率は1パーセント という国。 なんとその国へ自分の群れのれいむが連れて行かれたとの事。一足早くふらんも助けに向かったらしい。 そして俺は暇だから付いていくことにした。 そんなこんなで島に到着。 見た感じ、真ん中に大きな山がそびえ立つ以外は普通の島である。 と、砂浜の向こうに一匹のゆっくりが倒れていた。 あの羽根は・・・・・・ふらんだ。 「どうしたのふらん!ゆっくりしてね!!!」 意外に素早い動きでふらんの元へ近づくまりさ。しかしどう見てもふらんの傷は致命傷である。 羽はボロボロ。眼は虚ろ。体のあちこちに切り傷があり、片腕が既に無くなっていた。 「ううぅ……ふらんまだがんばれるー。」 ふらんの傍には折れたれーばていん(鉄パイプ)が落ちていた。どうやら敵に折られたのだろう。 「おにーさん……おにーさんはしぬまえにげんきになれるわざがつかえるってきいたよ。ふらんにも」 言わずとも分かった。命を削る代わりに力を増大させる技だ。本当は使いたくないが、そう言うなら使おう。 「刹活孔! はあああああ!」 ふらんの肩に思いっきり指を突っ込む。 その瞬間 「うわああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」 ふらんはトラックにでも衝突したかのように思いっきり吹っ飛ばされていった。そのまま100m先の岩に衝突。 「……ありゃ死んだな。しかも星二つ美味しいです。」 「いみがぜんぜんわからないよ!!! ふらんをゆっくりさせてどうするのぉおお!!!」 「気にすんなまりさ。それよりふらんをここまで痛めつけた奴が居るはずだ。気をつけろよ。」 まりさは自信満々と言った顔で答えた。 「まりさにはドスからおしえてもらった『ゆすたーすぱーく』があるよ!ゆっへん!」 そういやそんな事もあったか。そりゃ余裕面できるわな 「このくにではどすすぱーくなどしらぬつうじぬよ!!」 「誰だお前は!!!」 突然の声に辺りを見回す、すると、10m先の大岩の上に一匹のゆっくりがいつの間にか乗っていたではないか。 金髪の髪のゆっくりだ。その周りには蜘蛛の巣のようなものが張られていた。 誰にも気付かれずにここまで近寄るその実力。男はここが油断を許されない地だと理解した。 「しんにゅうしゃをたいじしにきたゆっくり、スパイダーマぶぅうううううううう!!!」 思いっきりの右ストレートでゆっくりをぶっとばす。 そのまま海まで吹っ飛んだゆっくりはポチャンと海に落ちた。 「版権的に強敵だったな。早く行くぞまりさ。」 「ゆっくりりかしたよ。」 しかし雑魚でもふらんを倒すほどの強さ。 心の片隅に不安を残しつつ奥へ進んでいった。 その後も、数多の修羅と呼ばれるゆっくり達が襲いかかってきた。 「ふぃーばぁあああああああ!!!」 「ゲラゲラゲラゲラゲラ」 「おちろ、かとんぼ!」 「ふーじょん!」 全方向から雷や砲弾や炎や銃弾が降りそぞぐ。 それを男とまりさはお互いに背中を預けながら退けていった。 「ゆろーすぱーく!!!」 口から放たれた直線上のほそ長い光線が敵を貫き 「ゆーれりーずさん!!!」 まりさの周りに現れたビットが近づく物をぶっ飛ばす。 「ゆびるだむとーち!!!」 帽子から取り出した謎の瓶を投げつけると、たちまち敵は爆発した。 「っでなにみてるのぉおおおおおおお!!!おにーざんもでづだっでよおおおおおおおおおお!!!」 まりさはそう言って男の方を向く。男は板チョコ片手に座って携帯を弄っていた。 「ああ待て待て。今テトリス良いところなんだ。」 「いいがらでづだっでよねぇええええ!!!かずおおいんだよぉおおおおおおお!!!」 「あー待て待て。ああもう!なんで来ないんだよ長い棒!」 「だがらてつだってぇええええええええ!!!!」 そうして修羅達を蹴散らしたまりさ達は、なにやら大きなお城の前にたどり着きました。 中に入ってしばらくすると、何者かの影が見えた。 その影の大きさと形から行ってあれは…… 「に、人間だとぉ?」 「にんげんさんだね!どうしてここにいるのかな?」 近づくにつれて、その人間の顔が分かってきた。 髪を短く切ったちょび髭の男だ。 目の前まで来ると、その男は口を開いた。 「我が名はゼロ……」 「どうみても羅将ハンだろてめぇええええええええ!!!おぉぉぉ… くらいやがれぇ! 」 力を溜めた拳で目の前の敵を薙ぎ払おうとする男。 それと合わせるようにまりさも 「ゆろーすぱーく!!!」 結局二人の合体技で謎の男をなんとか撃破。 そのまま一行は先を急いだ。 そうして、やっとこの国を支配する『カイオウ』なる人物の元へたどり着い。 顔を兜で覆った謎のゆっくり。その傍にはあのれいむがいた。 「でいぶぅうううううううううう!!!」 「ばりざぁあああああああああ!!!」」 感動の再会である。ここまでの多くの犠牲(ふらん)を伴ったが、嬉しさのあまり涙するまりさ。 すると、兜をつけたゆっくりが話始めた。 「そいつをたすけたいかじゃおーん?」 「ゆ!あたりまえだよ!さっさとれいむをかいほうしてね!!!」 ガシャン!っと兜がひとりでに外れた。そこから現れたのは めーりんだった。 それも体中に傷を負い、明らかに常ゆっくりとは違う殺意を纏っためーりん。 そのめーりんがゆっくりと、しかし恐ろしいほどの威圧感と共に口を開いた。 「私は一向にかまわんッッ!!!」 「・・・まりさ。」 「ゆ?」 「必殺技だ。俺が許可する。やれ。」 「ゆすたーすぱーく!!!」 「じゃおおおおおおおおおおおおおんんん!!!」 まりさの口から放たれた極太光線は、めーりんを包みこみそのまま屋敷を破壊した。 「最後まで似たような展開だったな。」 「ゆぅ。そーだね。」 「とりあえずはやくおうちかえろうね!れいむおなかすいたよ!」 「……れいむ。」 男はひょいとれいむを持ち上げた。 「ゆぅ?」 れいむは頭の上に?マークを出しながらこちらを見ている。 「パクリ。うめえ。」 「でいぶのおがおだべないでぇええええええええ!!!!」 「おにーざんなにじでるのぉおおおおおおおお!!!」 【あとがき】 あとがき……そんなものはうちにはないよ?
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fuku1835「ゆっくりゃ拷問室・前編」の続きです。 両手で親子の首を掴んで、机の上に軽く叩きつける。 「うぎゃっ!」 「ぷぎゅ!」 そのまま喉輪を食らわせて、二匹の身動きを封じる。 短い手足でジタバタと暴れるが、人間の腕力に敵うはずも無い。 とりあえず赤ちゃんゆっくりゃからは手を離して、片手で道具箱を探る。 木槌と、数本の釘を取り出して机に並べる。 そして、親ゆっくりゃの腹部に、腹が破れない程度の力で拳骨を叩き込む。 「ぐぼぅっ!! うぎゃぶぇっ!」 口から肉汁を吐き出して、悶え苦しむ親ゆっくりゃ。 その隙に首から手を放すと、素早く木槌と釘を掴んで、親ゆっくりゃの衣服を机に固定していく。 手足に直接釘を打ち込むのも悪くはないが、暴れた勢いで手足ごと千切れてしまう場合があり、 そうなると結局、二度手間になってしまう。 次いで、赤ちゃんゆっくりゃの服も釘で固定する。 そして問う。 「れみりゃ、お前がどうしてこんな目に遭ってるか、わかるかい?」 しかし、れみりゃは答えもせずにもがいているだけだ。 顔を真っ赤にして、 「う~うぁ~! れみりゃとあかちゃんをはなすんだどぉ~! はやくしないとたーべちゃーうぞー! ぎゃおー!!」 などと喚き散らしている。 私は無表情のまま、釘を取り出して、 「話を聞け!! この低能豚がっ!!」 親ゆっくりゃの片目に突き刺した。 「うぎゃぎっ……むー! んぅ~!」 また悲鳴を挙げる前に、口を塞ぐ。 声のトーンを下げて、ゆっくりゃの無事な片目に釘を突きつけて問う。 「もう一度聞くぞ? どうしてこういう目に遭ってるか、わかるか?」 口から手を離してやると、ゆっくりゃは困惑と恐怖に歪んだ表情で、おずおずと答えた。 「わ、わかんないだど~……」 「答えになってねぇだろ、カス」 素敵な道具箱から、また道具を取り出して、それを赤ちゃんゆっくりゃの腕に押し付けた。 紙やすりである。 「まんみゃ~、たしゅけて~!」 「や、やめるんだど~、れみりゃのかぁいい赤ちゃんに――」 最後まで言い切らない内に、私は紙やすりで赤ちゃんゆっくりゃの腕を猛烈に削り始めた。 「いっ……!! うぁぁぁぁああゔいだいいだいだいぃぃぃ!! だじゅげでぇまぁまぁぁぁぁぁ!!!」 あっという間に削げていく腕の皮。 肉汁が滴り落ち、むき出しの中身――人体で言うなら筋肉にあたる部位を容赦なく擦り、削ぎ落とす。 大根おろしの様に、皮と肉と肉汁が混じりあった物が飛び散る。 ふと、そこで手を止めて。私はゆっくりゃに視線を戻す。 「かわいそうに。 お前が答えられなかったから、お前の赤ちゃん、腕がボロボロになっちゃったよ?」 「うぅ~……な゙ん゙でこんなことするんだどぉ゙~」 理不尽な問いを投げられ、目の前で我が子を痛めつけられ、ゆっくりゃの精神は混乱の極致にあった。 なぜ、こんな目にあっているのか。 自分が何か悪い事をしたのだろうか? 身に覚えは無い。 初めはわがままを言って殴られたりしていたが、 ここ最近の自分達は、餌も残さず食べていたし、お兄さんを怒らせる事なんてしていない。 じゃあ、なんでこんな事に? 「はい時間切れ。 またお前のせいで赤ちゃんが痛い思いをする。 可哀想にな」 「ま、まっでぐだざいぃぃぃ! あやまりますがらー!! ごめんなざいー!!」 「謝れなんて言ってないだろ、というか何について謝ってるんだお前? 私はな、どうしてお前達がこういう目に遭ってるのか、その理由を聞いてるんだよ」 淡々と諭しながら、赤ちゃんゆっくりゃの右手を掴む。 人間の幼児そのものといった、小さな五本の指を掴んで、捻じ切った。 「いぎゃぁぁぁい゙いぃぃ゙!! まぁんま゙ぁぁ゙ぁ゙たじゅげでよぉぉぉぉ!!」 激痛と恐怖で絶叫する赤ちゃんゆっくりゃ。 ああ、なんて愛らしいんだ。 こんな愛くるしい無垢な存在が、残虐な拷問に悶え苦しむなんて、幻想郷とはなんて残酷で素敵な世界なんだろう。 「あがじゃぁぁぁん!! ゔぅ~! まんまがぜったいたずげるからね゙ぇ゙ぇ!!」 片目にブッ刺さった釘の痛みも介せず、子供を助けようとする、この親子愛。 感動の余り泣きそうになる。 「うん、質問を変えよう。 赤ちゃん、それにれみりゃ、よく聞け。 どっちかが痛い思いをすれば、その間、もう片方は見てるだけで済む。 さ、どっちが拷問される方をやるんだ?」 以外にも、結論は早く出た。 「れ、れみりゃがいだいおもいしまずがら、あかじゃんはたずげてくだざい……」 「……よし、OKだ。さっそくいくぞー」 風を切る音と同時、柔らかい肉が潰れる音。 木槌で、ゆっくりゃの右腕を叩き潰した。 「オラオラオラオラオラオラァァァ!!」 悲鳴を挙げる前に、素早く連打。 指先から肩に至るまで、徹底的に潰していく。 「ぅびがぎぃ!! うっ! ゔぃいぃぁああ゙あ゙ぃいぃ゙!!」 この時点で、ゆっくりゃは白目を剥いて痙攣を起こし、失神していた。 だが、更なる激痛が意識を取り戻させる。 今度は左腕が潰されていった。 「うーーーーーーーーーっ!! うぅぅぅぅううううぁぁうぅぎぃぃぃぃ!!!」 もはや言葉になっていない。 単なる絶叫が迸るのみ。 発狂寸前の痛みが精神を蹂躙している事だろう。 口から泡を吹き、息も絶え絶えに痙攣を繰り返すゆっくりゃ。 「よっし、今度は赤ちゃんの番だね!」 その言葉に、ゆっくりゃの意識が鮮明さを取り戻した。 「な゙ん゙で゙あがじゃんもいじめるのぉぉぉぉぉ!! れみりゃだげがいたいおもいすれば、だずげでくれるんじゃなかっだの゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙」 「あれ、そんな事言ったかな? おにーさん馬鹿だから忘れちゃった♪ ……おらっしゃぁ!!」 「うぎゃぉぉぉぉぉおおおおお!!」 一気に、赤ちゃんゆっくりゃの両足を引きちぎる。 噴出す肉汁! 赤子の絶叫! 最っ高のエンターティメントだ!! さぁ、ここから先は一気にぶっ壊していこう! 先ほどの紙やすりで、赤ちゃんの腹部を猛烈に擦る、いや、肉を削ぎ落としていく。 「うううううううううぁああああああああああぁああああ!! まぁまぁぁああああああ!!!」 成体に比べ貧弱な肉体はいとも容易く、腹の肉を削って剥がし、腹腔内を露出させる。 さらに素敵な道具箱から、瓶を取り出して、その中身を万遍なく、開かれた腹へ流し込んでいく。 その正体は、塩。 むき出しの傷口、ましてや人間でいう内臓まで塩を流し込まれたのだ。 その苦痛たるや、失神と覚醒を連続で繰り返して全身を振るわせ続ける程に凄まじい。 さらに手を止めることなく、別の瓶を取り出して、中の液体を、赤ちゃんゆっくりゃの顔半分に振り掛ける。 マッチを取り出して擦り、そっと火を近づけた。 火炎が噴き上がった。 「びゃぁぁああああああああああああ!! まんまぁぁぁ! おねぎゃいだぎゃらだじゅげでぇぇぇぇぇぇ!!」 液体は純度100%のアルコール。 みるみる内に、可愛らしかった顔の半分が焼け爛れていく。 その惨たらしさに、私の精神に多幸感が満ち溢れていくのがわかる。 そこで手を止めて、ゆっくりゃに再び問う。 「さて、何で君達はこんな目に遭ってるのかわかるかな~?」 我が子が凄惨が拷問を受けているのを目の当たりにし、放心状態だったゆっくりゃは、はっと我に返った。 「わ、わかんないでず……おねがいじまず……あがちゃんをたずげでくだざい……」 泣きじゃくりながら懇願するゆっくりゃに、私は晴れやかな笑顔で告げた。 「いい事を教えてあげよう。 お前が答えられなかったから、君達はあんな目に遭った」 私は数秒の間を置いて、解答を教えてあげた。 「理由なんて特に無いよ? 君達がとっても可愛いから、育てて拷問して殺してるだけ。 それが私の趣味なんだよ。 謝る事なんてなかったんだよ。 君達はとても仲良し親子で、特に悪い事もしてなかったしね。 そういうわけで、運が悪かったと思って、 ゆ っ く り 死 ん で い っ て ね ! !」 それを聞いた時、ゆっくりゃ親子の精神に、決定的な亀裂が走り、絶望が駆け抜けていった。 悪い事なんてしてなかった。 お外に出られないのは不満だったけど、 ごはんも水も、寝床もあって、それなりに良い生活をしていた。 親子や同族達と、透明な箱を通しておしゃべりしたり、歌ったり踊ったり、楽しい毎日を過ごしていた。 可愛い赤ちゃんと仲間達に囲まれて、幸福な日常を過ごしていた。 それが全て、今日の為に用意された偽りの幸福だったなんて。 それを理解した時、親子は狂った。 「うー……う? うぁ~♪」 「う~う~♪」 「うー♪ うぅ~? うー!」 「うっうー!」 胴有りのれみりゃ種であるにも関わらず、人語を放棄していた。 否、ある種の退化とも言えるだろう。 全身を走る激痛にも関わらず、二匹はただ笑っていた。 もう、笑うしかなかった。 「まぁ、長く持った方か」 私はそんな二匹を見つめながら、この親子にどんなトドメを刺してやろうか。 明日はどのれみりゃ種を、どんな風に拷問処刑しようか考えていた。 うーぱっくに生ゴミを入れて封をしてやるのもいいかな。 ドロドロに腐敗した汚物を体内に入れられたうーぱっくはどんな反応をするのだろう。 ゆっくり用の傷薬で、手足を千切って再生させてまた千切って……それもありかもしれないな。 あぁ、れみりゃ種こそ究極の被虐待生物だ。 この世かられみりゃ種が絶滅するまで、私は永遠に幸福を享受できる事だろう。 そんな夢想に浸りながら、私は明日の悦楽に身を震わせていた。 このSSに感想を付ける
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農作業を終えた青年が、自宅に向かって、ゆっくりと歩いていた 不思議な事に、青年の後ろを二匹のゆっくりが、跳ねながら追いかけている その二匹は、ゆっくりまりさと、ゆっくりれいむなのだが、それぞれ帽子とリボンがない 「まつんだぜ!まりさのぼうしをかえすんだぜ!」 「ゆー!れいむのりぼんをかえしてね!」 二匹の飾りは、青年が左手に持っていた 青年の耳には、二匹のゆっくりの叫び声が、はっきりと聞こえているはずだが、青年はそれに答えず、一定の速度で歩いていく 「ゆー!まりさのぼうしをかえすんだぜ!」 「ゆ!ゆ!れいむのりぼんをかえしてね!」 いくらゆっくりが叫ぼうとも、青年はひたすらに無視を続ける ゆっくり達は、なぜ自慢の髪飾りを奪われ、無視されるのか分からなかった 二匹は、滅多に人の近付かない、森の奥深くで、豊富な昆虫や木の実などを食べて、ゆっくりと生活していたのだが ゆっくりぱちゅりーに、人間という生き物が、畑という場所で、美味しいゆっくりできる食べ物を作っている、という話を聞いたため 周囲のゆっくり達が止めるのも聞かず、一度、人間の食べ物を食べに行こうと、人里まで降りてきたのだった 二匹は人里まで降りると、いつも暮らしている森と、全く違う景色に、大喜びではしゃぎまわった 「なんだかすごいばしょなんだぜ!」 「もりにとじこもっててそんしたね!」 そんな会話をしている二匹は、棒を持った、二本足で歩いている生物、すなわち人間を発見した 「ゆゆ!なんかへんなのがいるよまりさ!」 「ゆ!あれがぱちゅりがいってたにんげんだとおもうんだぜ!さっそくごはんをもらうんだぜ!」 ゆっくり二匹は、ぱちゅりーから得た、人間の情報を自分の都合のよいように、歪曲、修正して解釈したため 人間は、美味しい食べ物をゆっくりにくれる生き物、と考えていた 二匹は、青年の前に飛び出すと、元気にあいさつをした、自分達に、美味しいものをくれる相手には、元気よく挨拶してやろうと思ったからだ 「「ゆっくりしていってね!!」」 「さっそくだけどはたけのごはんがほしいんだぜ!」 「おいしいごはんをちょうだいね!」 二匹は、すぐにこの男が美味しいものをくれるだろうと、思っていた しかし、青年は、二匹から飾りを素早く奪い取ると、そのまま歩きだした そして、現在にいたる、れいむとまりさの訴えは、すべて無視され続けている れいむも、まりさも、すぐにでも森に帰りたかったが、髪飾りを奪われている以上、そのまま帰ることはできない 「ゆっくりしてないおじさん!ぼうしをかえすんだぜ!」 「ゆっくりなおにいさん!はやくりぼんをかえしてね!」 悪口を言っても、褒めても男は無視を続ける ゆっくりが喋る、男は何の反応も示さず歩き続ける、そんな状況が十分は続いただろうか、自宅に着いた男は家の中に消えていった ゆっくりは、飾りを奪われたことも忘れて、初めて目にした、人間の家に驚き、感激していた 「でっかいおうちなんだぜ!とってもでっかいんだぜ!」 「ゆゆゆゆ!ここならとってもゆっくりできそうだね!」 そんな会話をしていると、家の中から出てきた人間に髪の毛を掴まれ、強引に家の中へ引きづり込まれた 「いいたいんだぜ!ひっぱらないでほしいんだぜ!」 「ゆぅぅぅ!いたいよ!ゆっくりやめてね!」 若者は、れいむを玄関に落とすと、殺さない程度に踏みつけた 「ぎゅびゅ!!!」 「れいむ!おじさんやめるんだぜ!れいむをいびゅ!!」 まりさが最後まで言わないうちに、男はその頬を平手で打っていた 「い…いたいんだぜ!やめう゛ぅ!」 男は再び、先ほどより少し力をこめて、まりさの頬を平手で打つ 男はそのまま、まりさの頬を叩き続ける、見ようによっては愛嬌のある顔は、平手打ちを喰らうたびに左右に揺れる 「いだい!びゅごめゆ゛っごめんなびゅびゅ!!!」 必死に許しを乞うまりさを無視して、男はまりさの頬を叩き続ける 「うぅぅ!!うぅ!!!!!!」 一方、男の足元ではれいむが、まりさとは比べ物にならない、苦痛を味わっていた 男はゆっくりと、しかし、確実に足に掛ける力を強め続けている 「うぅ…う…ぅぅ」 男から逃れようと、もがけばもがくほど、男から受ける圧力は高まっている 「ゆ!びゅ!!…ぅう…う!!!!」 自分の皮が伸びていく、体内の餡子が押しつぶされていく、抗い様のない苦痛 非力な、れいむの出来ることは、顔を真赤にして、耐えようのない痛みを受けながら、うめき声をあげることだけだった 男は、実に五分間の間、二匹のゆっくりを叩き、踏みつけ続けた 男は、顔を真っ赤にはらしたまりさと、頭が少々へこんだれいむを竹でできた、虫籠ならぬ、自家製のゆっくりかごに入れると、家の中に入って行った 男は食事に風呂を済ませると、二匹のゆっくりの前に、彼らの髪飾りをもって現れた 「ゆ!ぼうしをかえしてだぜ!」 「れいむのりぼんをかえしてね!」 男は、籠の中で騒ぐ彼らの前で、帽子とリボンを玄関に落とすと、それらを思い切り、踏みにじった 「やややめるんだぜ!!!はやくやめるんだぜ!!!!!」 「れいむのりぼんをふまないでね!!!!ゆっくりせずにやめてね!!! しかし、男の感情のない、冷たい瞳で見つめられると、眼の前で大事な帽子を踏みつけられているにもかかわらず、ゆっくり達は、なにも言えなくなった 自分達の、目の前にいる生物が、決してゆっくりの力では、敵わない事は、さすがのゆっくりブレインでも、理解できた 二匹は、震えながら、自分達の髪飾りが、蹂躙されるのを見ているしかなかった 男は、そんなゆっくり達に見せつけるように、何度も何度も飾りを踏みつける 男が足を退かす頃には、二匹にとって大事な、大切な髪飾りはボロボロになっていった 「れいむのれいむのりぼん…」 「いやなんだぜ…かえりたいんだぜ」 男は、滅茶苦茶に踏みつけた髪飾りをそのままに、自分の部屋に戻って行った 二匹は、しばらくの間、己の不幸を呪い、汚され、傷つけられた髪飾りに、涙を流し、人間にすさまじい恐怖を覚えた 二匹は、また男が来るのではないかと、びくびくしながら過ごした 「ゆ…もしももりにかえれたらにどとひとざとにはおりないんだぜ…」 「ゆぅ…にんげんはゆっくりゃよりつよくて…ゆふらんよりもいじわるだよもりにかえりたいよ」 二匹はそのうち眠ってしまった、極度の疲労と恐怖、髪飾りを滅茶苦茶にされた、精神的なショック、空腹などが、彼らを眠りの世界にいざなった れいむは夢を見ていた、子供のころ、姉妹たちと楽しく遊んでいた頃の夢だった 鬼ごっこや、かけっこ、かくれんぼなどをみんなと一緒に、やっている夢 「いたい!いたいよ!!!」 れいむは、髪を引っ張られる痛みで、目を覚ました 男の目線まで釣りあげられると、昨日のまりさが受けていた平手打ちを食らった 「いだ!やびゅ!ゆびゅ!いだいいだいぃぃ!!!!」 何度となく、男に平手打ちを喰らう、下では昨日のれいむの様に、まりさが男に踏みつけられている 「っづう〜…うぅう!!」 まりさの、綺麗な金髪を男の足が踏みにじっている、まりさも、昨日の自分の様に、皮の伸びる痛みと、餡子を押しつぶされる激痛を味わっているのだろう 男は、昨日のより多めに十分間ゆっくり達を痛めつけた ボロボロになったゆっくりを籠に入れると、男はゆっくりの入った籠を持って、昨日二匹に出会った場所に連れて行った 二匹を籠から放り出すと、昨日自分の手で滅茶苦茶にした、二匹の髪飾りを投げ渡した 二匹は、それぞれの髪飾りを咥えると、跳ねることはせず、地べたを這いずりながら、森へ向かって逃げて行った 二匹は、男に背を向けていたため気付かなかったが、男は去っていく二匹をまるで、卒業生を送り出す、担任教師の様な目で、見つめていた 「ふー、彼等もこれに懲りて、二度と人里に下りて来る事は、危険だということを学んだでしょう」 そんなことを言うと、青年は首にかけていた手拭いで、目からあふれ出る、心の汗を拭いとった 彼は自称、愛のゆっくり熱血教師、通称、ゆっくり体罰教師と呼ばれていた ゆっくりに口で言っても駄目だ、彼らに物を教える、最も効果的な方法は肉体言語だ、というのが彼の考え方だった 殴って、蹴って、人間がどれほど恐ろしいか教えてやれば、彼らは金輪際、人里へは下りてこない これで、人間の恐ろしさを知ったゆっくり達は、虐待お兄さんに捕まって虐待されたり、畑のトラップで死ぬ事もなくなる 教育の力で、あの可愛い生徒達は、大自然の中、のびのびと暮らしていく事ができるのだ 「可愛いゆっくりの未来を守るためには、体と体、心と心の、ぶつかり合いが大切なのです」 晴れ渡った青空に向かって、そう呟くと、男は家に帰っていった ちなみに、男から愛のこもった教育を受けた、生徒達はというと、結果的には男の言うとおり、二度と、人里には近づかなかった しかし、大自然の中、のびのびとは暮らしていくことはできなかった れいむは、長く頬を張られ続けたせいで、頬の皮が、柔らかく、破けやすくなっていた ゆっくり体罰教師に、地面に投げつけられたせいで、右頬には大きな穴があき、這いずるたびに、餡子が漏れ出した れいむは自分の体から、命の元が、徐々に流れ出ていくのを感じながら、二度と覚めることのない眠りについた まりさは、柔らかい饅頭の体で、人ひとり分の体重を長い間、かけ続けられたせいか、跳ねることができない体になってしまっていた ミミズのような遅さで、這いまわることしかできない身体では、敵から逃げることも、獲物を追う事も出来ない そんなゆっくりが、厳しい自然界で、生き延びることができるはずがなかった その日のうちに、まりさはれみりゃに食い殺されてしまったそうだ 作:ゆっくりな人 以前書いた虐待 ゆっくりカーニバル 臭い付きゆっくり(上) 臭い付きゆっくり(下) ゆっくり移植 きらーうーぱっく このSSに感想を付ける
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夕闇が迫っていた。 傾いた日差しがアリスの影を伸ばす。 影の先には、「ゆっくり魔理沙」が一匹。震えながらアリスに向かい合っている。 「日暮れ前に帰ると言っていたのに、こんな時間まで何をしていたのかしら?」 穏やかに問いかけるアリス。 逆光となり、その表情はうかがい知ることはできない。 ゆっくり魔理沙の頬に流れる動揺の汗。 「ゆっ、ゆっくりしていたよ!!!」 取り繕うようにピョンピョンと飛び跳ねて、精一杯の笑顔を浮かべてみせるも。 「へぇ」 ごく短い応答にその動きも凍りつく。 「私とあなたとの約束は、そんなことで破られたの」 呟きながら、歩み寄ってくるアリス。 「魔理沙って名前のつくものは皆そうね。今日だって一緒に過ごす約束だったのに、欲しい本を思い出したなんて 勝手な理由でパチュリーの所へ……!」 不満を吐き出しながら、うつむき加減に近づいてくる。 ぷるぷると魔理沙の丸い体が震える。 本当は逃げ出したい。 だが、逃げだした際の末路は、この少女に拾われてからの数ヶ月間で嫌というほど思い知らされていた。 ゆっくり魔理沙は口をゆがめ、いやいやと全身を震わせる。 「ゆっくりした魔理沙がわるかったです!!! ごめんなさいいいいいい!!!」 おいおいと嗚咽をこぼしながらの哀願に、アリスは屈みこんでゆっくり魔理沙と視線を合わせる。 「みっともなく泣かないで。別に怒ってないわよ」 涙でぼやかえた魔理沙の視界には、子供をなだめるようなアリスの笑顔。 頭を優しく撫でるアリスの手に、ゆっくり魔理沙の表情もとろんと落ち着く。 「ほんとう?」 「ええ、怒ってないわ、あなたに何かあったのかと心配しただけ。さあ、早く帰りましょう」 アリスの細い腕に抱き上げられるゆっくり魔理沙。 柔らかな膨らみと穏やかな心音。 少しだけ残っていた魔理沙の緊張も心地よさに解けていくのだった。 翌日、ゆっくり魔理沙は機嫌よく野へ遊びに行く。 昨日の埋め合わせでやってくる魔理沙を迎えるため、今日も外に放りだされたゆっくり魔理沙。 「ゆっくりー!!!」 いつもは家に押し込められているだけに、開放感に勢いよく体も弾む。 このまま、ずっとゆっくりできたらどんなに幸せなことだろう。 だが、どんなに逃げてもなぜか必ず捕まった。 そして、「おしおき」を受けることになる。 前回の脱走では、深い森の奥、枯れた木のウロに逃げ込んで眠っていた。だけど、目が覚めると窮屈で透明な箱の中。 「ゆー?」 境遇を理解できないまま、とりあえず抜け出そうとする。 だが、上下左右、みっちりと詰め込まれてどうすることもできない。 その強制的な「ゆっくり」が、アリスによるものだと気づくのに時間はかからなかった。 横を向くことも許されない固定された視界の端っこに、背を向けて紅茶を口にするアリスの姿。 「おねえさん!!!」 呼びかけてみるも、反応はない。 「おねえさん、ここからだして!!!」 重ねた呼びかけも無視される。 「苦しいよ!!! だして、お願い!!!」 口調に懇願がこもりはじめても、アリスは振り向きもしない。 空しい呼びかけも、応える声がないまま過ぎていく時間。 三時間、何の変化もなく過ぎた頃、席から立ち上がって食事の支度を始めるアリス。 いつも美味しい食べ物を用意してくれた記憶に、ゆっくり魔理沙は「もうそろそろ出してくれるかな」と淡い希望が 芽生え始める。 「おねえさん、おなかすいたよー!!!」 表情の変化すら困難な箱の中、かろうじて愛らしい笑顔を形作るゆっくり魔理沙。 しかし、アリスが作った料理は一人分。淡々と食事を済ませると、魔理沙の視界から消えて、そのまま戻ってくる ことはなかった。 ようやく、ゆっくり魔理沙はアリスの怒りの深さを思い知る。 「ごめんなさい!!! もう逃げたりじまぜんがらっ、だじでぐだざい!!!」 箱を震わしての必死の謝罪。 だが、許されるどころか、もはや省みられることもなかった。 しまい込んで忘れ去ったオモチャのように、ゆっくり魔理沙から完全に興味を失ったアリス。 アリスの家において、ゆっくり魔理沙はもはやオブジェ以外の何物でもない。 そのまま、一日、二日、三日……そして、一週間。 放置されたゆっくりの体は、声を上げる力も失い、少しずつ干乾びていく。 ゆっくり魔理沙は、全身がひび割れそうな、びりびりとした猛烈な痒みに悶えるものの、身動き一つできない。 癒されることのない痒みと痛み。あと、どれだけ苛み続けられれば許されるのか、あるいは死ねるのか、ひたすらに 残された時間が狂おしい。 それだけに、アリスが近づいてきたその時は、ゆっくり魔理沙の期待が燃え上がった。 「おねえさん、いい子になるから!!! だから、だしてください!!! おねがい!!!」 媚を売るように笑顔で呼びかけるも、アリスの手はその箱の近くに置いていた人形を手にとり、そっけなく引き上げていく。 「い゛がな゛い゛でええええ!!! だじでよおおおおおお!!!!」 追いすがる、絞り上げるような声がアリスに届くことはなかった。 放置は続く。 霞んでいく、ゆっくり魔理沙の表情。 一ヶ月後、ようやく箱から出されたゆっくり魔理沙。しかし、しばらくの間、虚ろに壁をながめるだけの生物と化す こととなる。 そういうわけで、「箱」以来、ゆっくり魔理沙は脱走を試みることすらしなくなっていた。 それに、最近はアリスも優しく接してくれるようになってもいるのだし。 昨日のアリスの抱擁を思い浮かべて、魔理沙は嬉しげに森の奥へと飛び跳ねていくのだった。 森の奥、うっそうとした木々の向こうに、陽光の差し込む野原が開けていた。 陽だまりを受けて鮮やかに輝く草むらに、ゆっくり魔理沙は身をおどらせた。 「ゆっくりしていってね!!!」 跳ねながらいつもの言葉を口にする。 すると、にわかに木立が揺れる騒々しい音。 「今日もゆっくりしようね!!!」 言葉とともに姿をあらわしたのは、二匹のゆっくりたち。 一匹はよく見かける「ゆっくり霊夢」で、丸い顔に気色を浮かべて勢いよく近づく。もう一匹は「ゆっくりパチュリー」で、 あまり外にでないことと、病弱ですぐ死ぬために希少種とされていた。 ゆっくりパチュリーは他の二匹に比べ、どこか青白い顔。それでも、ゆっくり魔理沙に向けて懸命ににじり寄っていく。 待ち受ける、ゆっくり魔理沙の表情に浮かぶ心配げな眼差し。 「ゆっくりきてね!!!」 「むきゅーん!!!」 魔理沙に応じるその鳴き声も、この種特有のものとされている。 ゆっくりパチュリーは飛び跳ねることができないのか、じりじりと這いよって、ゆっくり魔理沙の元へぴったりと寄り添った。 「みんなで、ゆっくりしようね!!!」 魔理沙の真上に飛び乗るゆっくり霊夢。 三匹、押し合いへし合い、頬をすりよせている。 アリスに捕まる前からの友達との邂逅に、ゆっくり魔理沙も満ち足りた笑顔だった。 そんな三匹の前を、白い蝶がふわふわと通り過ぎる。 「待って、ちょうちょさん! ゆっくりしていってね!!!」 風に吹かれるがまま漂う蝶々を、思い思いに追いかけていく三匹。 やがて、白い蝶々は蜜を求めて野の花に止まった。 戦闘を駆けるゆっくり霊夢が、勢いよく飛び込んでいく。 「ゆっくりいただきます!!!」 ぱっくり開いた口で、蝶々をまるごと飲み込んで、花ごともぐもぐと咀嚼する。 「霊夢だけ、ずるい!!!」 ゆっくり二名が飛び上がって抗議すると、ゆっくり霊夢は魔理沙の元へ。 いきなり、ぺったりと唇を合わせる。 そのまま、口の中のものを、ぺっ、と渡した。 獲物を受け取った魔理沙は、頷いて最後尾を息を切らしてついてきたゆっくりパチュリーに向き合う。 パチュリーは、荒い息のまま、そっと目を閉じた。 「魔理沙、ゆっくりシてね……」 そんな仕草に、なぜか戸惑った様子でゆっくり魔理沙が口付け。 「む、むきゅうー!!!」 「……!!!」 途端に吸い上げられ、身動きのとれなくなるゆっくり魔理沙。 やがて、ぴくぴくと震えて、色合いが若干紫がかってくる。 「ゆっくり離してね!!!」 ゆっくり霊夢が魔理沙の帽子を噛んで、懸命に引っ張る。 ちゅーっぽんっと、小気味いい音がしてばらばらに弾む二匹。 「……ぷはあ」 満足げなゆっくりパチュリーと、白目をむくゆっくり魔理沙。 ゆっくりたちの繰り広げる楽しげな一幕。 しかし騒動の最中のため、三匹とも聞き逃していた声がある。 無機質な響きを持つ、不思議な声。 「シャンハーイ」 それは、上空から見下ろす、一体の人形の呟きだった。 まだ、日暮れまでは時間があったが、アリスを怒らせないため、名残り惜しそうな友達に別れを告げるゆっくり魔理沙。 懸命に転がってかけていき、一息にアリスの家へ。 アリスは家の外、ゆっくり魔理沙に背を向けて立ち尽くしていた。 「ゆっくりしないできたよ!!!」 慌てて、する必要のない言い訳を口にするゆっくり魔理沙。 「おかえり」 簡潔なアリスの答えだが、返ってくるまで時間を要した。 やがて、アリスの肩がかすかに震え始める。 どうやら、声もなく笑っているらしい。 「ゆー?」 アリスの様子に小首……いや、全身を傾げて疑問を呈するゆっくり魔理沙。 「あのね……魔理沙がうちにきたんだけど、予定を取りやめて霊夢のところの宴会に参加しようぜって、言い出して」 うふふうふふふと、笑いはかすれた声になって、ひそやかにゆっくり魔理沙のもとへ届く。 「なんで、私と二人っきりでいる時に霊夢が出てくるのよ?」 そんなことを聞かれても、ゆっくりは答えられない。 ただ、異様な主の様子を見守るだけだった。 「なんで、私と話すよりもパチュリーの、あの喘息女の図書を漁る方を選ぶのかしら」 アリスの言葉は誰の返事を期待しない罵りと化す。 「そして! 何で、あなたはあの憎たらしい奴と同じ顔をしているのよ!」 「ゆ、ゆっくり、ゆっくりしていってね!!!」 ようやく振り向いたアリスの怒気こみ上げる表情に、ゆっくりはすくみあがっていた。 つかつかと歩み寄り、その顔面そのものを両手で掴まれても逃げる素振りもできない。 「ゆっ、ゆっ、ゆっ! ゆっくりしてえええ!!!」 ぎゅうううううっと、細腕とは思えないアリスの力で締め上げられるゆっくり魔理沙。 変形して、もはや人の顔の面影もない。 「ねえ、魔理沙。こんな思い、私だけがするのは不公平だと思わない?」 頷かなければ、ぶちまけられる。 ゆっくり魔理沙は同意を涙目で訴えて、ようやくその万力から開放された。 「そう。なら、あなたにもしなければならないことがあるわ」 面白いことを考え付いちゃった。そんな素振りで手を組み合わせて、はにかんだようなアリスの微笑。 そっと、ゆっくり魔理沙の耳元に口をよせて、何事かささやく。 魔理沙の表情は、囁かれる度に火箸を押し当てられたかのように、苦痛の色合いの濃くなる表情。 反対に、囁き続けるアリスの表情は恍惚にとろけそう。 「ねえ、魔理沙。やらなければどうなるか、わかっているわね? あなたと、あなたのお友達が、ね」 いつにも増して可憐な笑顔で念を押す主を、ゆっくり魔理沙は心の奥底から恐怖した。 翌日、いつもの遊び場となる野原にゆっくり魔理沙がやってくると、茂みから顔を覗かせるゆっくり霊夢と パチュリーの二匹。 だが、二匹は魔理沙の後をついてきた人間に、不審げな視線を向ける。 「あの人も、ゆっくりできる人?」 ゆっくり霊夢の視線の先にいる人物とは、アリスだった。 上海人形を肩にのせ、無表情でゆっくりたちを眺めている。 だが、ゆっくり魔理沙は仲間たちの疑問に取り合わない。 「霊夢とパチュリー、よく聞いてね!!!」 強張った顔で告げるゆっくり魔理沙の言葉に、きょとんとして魔理沙を注視する二匹。 そのため、アリスが口の端をゆがめるように笑ったのを、二匹を見逃す。 「パチュリーは病弱で足手まといの癖に、べったりしてきて気持ち悪いよ!!!」 思いがけない魔理沙の言葉に、目を見開いて衝撃をありままに体現するパチュリー。 「目障りなので、家で永遠に寝こんでいればいいと思うよ!!!」 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ!!!」 「パチュリーはゆっくりしね!!!」 魔理沙の追撃に、ガクガク揺れながら、一歩、二歩、ゆっくりパチュリーが遠ざかっていく。 その様子を微笑みで見つめているのはアリス。 学芸会で主役となった子供を見守るように、ゆっくり魔理沙を見つめていた。 「そんなひどい魔理沙とはゆっくりできないよ!!! 謝って!!!」 一方、ゆっくり霊夢は体を激しく弾ませて魔理沙に詰め寄る。 ゆっくり魔理沙はしばらく詰め寄られるがままに後ろに転がっていく。 が、アリスが視界に入って踏みとどまり、叫んだ。 「霊夢なんかと、ゆっくりしたくない!!! 霊夢は餡子が腐ったみたいな匂いがするもん!!!」 「!!!」 今度は霊夢が白目をむく番だった。 「臭いのは大嫌いだよ!!! 大嫌いな霊夢とゆっくりしたくない!!! 目の前から消えてなくなってね!!!」 あれだけ躍動的に弾んでいたゆっくり霊夢の体が、もはや微動だにしない。 しかし、時間の経過と共に震えだす。凍りついた表情の双眸からは、ぽろぽろと零れ落ちる涙。 「ま゙り゙ざびどい゙! びどい゙! びどい゙いいいい!」 ぷるるると、全身を震わせる霊夢。 受け止める魔理沙は身じろぎ一つできな。 「魔理沙なんが、も゛う゛、じら゛な゛い゛!!!」 一際高く弾んで、枝をへし折りながら茂みの奥へと消えていくゆっくり霊夢。 よろよろと、その後に続くパチュリー。何度か振り向きつつ、森の奥へ。 後には無言のゆっくり魔理沙と、アリスだけが残された。 「よく、できました」 アリスが音を立てない拍手をゆっくり魔理沙にささげる。 その言葉に振り向く魔理沙。 「ゆっ、ゆっ、ひっく……!!!」 堪えていた涙が、友達が消えた後はとめどなく流れている。 「よしよし」 アリスは、アリスの教えたとおりの言葉を友達に伝えて一人ぼっちになった、ゆっくり魔理沙の頭を撫でてあげた。 至福の笑み。 「うふふふ、魔理沙も同じ目にあわせてられれば、私が慰めてあげられるのにね」 先ほどの光景に、どんな想いを重ねているのだろう。 アリスが一人ごちた、その時だった。 「おー、アリスじゃないかー!」 頭上から降り注ぐ、気楽な声。 アリスは弾かれたように虚空を見あげる。 「ま、魔理沙! なんでこんなところに!」 アリスの狼狽の向かう先は、箒に跨った本物の魔理沙の姿。 「いやな、茸狩りにいそしんでいたわけだが、ゆっくりどもが勢いよく走っているのを見かけて、興味本位でよってみた」 縁を感じる遭遇だが、アリスは喜びよりも背を伝う冷や汗を感じる。 もう少し遅れていれば、自分の醜い部分を魔理沙にさらけ出すはめになっていた。 胸を撫で下ろしながら、アリスは取り繕いをはじめる。 「ええ、この子がお友達と喧嘩したみたいで、慰めていたのよ」 言いながら、ゆっくり魔理沙の頭をごしごしと撫でつけ、押さえつけるアリス。 地に下りた魔理沙は、アリスの手の下で縮こまり、涙をこぼすゆっくり魔理沙に向けてかがみこんだ。 「この、ゆっくり私バージョンが、か? それは私としても気になるな。早く仲直りしろよ」 自分と同じような格好の生き物が相手なのだから気味悪がればいいのだが、魔理沙は気のいい笑顔でゆっくり魔理沙を 慰めに入る。 魔理沙の視界の外で、苛立ちを浮かべるアリス。 今だけは早く帰ってほしい。まずはそれが第一だが、同時になぜ魔理沙は自分以外にこんな優しさをほのめかす のだろうという不満にもつながる。 「ええと、魔理沙。この子のことは任せて、茸狩りを続けて……」 離れ欲しいと促すアリスの言葉だが、生憎、不意に目の前に現れた乱入者によって阻まれる。 「ゆっくり考えてきたよ!!!」 茂みから飛び出してきた、ゆっくり霊夢とゆっくりパチュリーだった。 よく見れば、二匹とも涙の跡が乾いていない。 それなのに、ゆっくり霊夢たちがゆっくり魔理沙を見つめる視線は、この上なく優しげだった。 「魔理沙の気持ちを知らなくて、ごめんなさい」 ぺこりと、沈み込むように霊夢のお辞儀。 「もう嫌な思いをさせないよう、遠くに引っ越すから、安心してね!!!」 その言葉に、ゆっくり魔理沙の眉が悲しみにゆがむ。 だが、頭の上にのせられたアリスの手の冷たさを思い出して、何とか堪えていた。 一方、霊夢とパチュリーの目は潤みだし、唇は嗚咽がこぼれないよう、真一文字に結ばれていた。 「……っ!!!」 けれど、想いを伝えるために霊夢は口を開かなくてはならない。 「……まりさ!!! もう……会えなくなるけどっ……!!!」 一度あふれた滂沱の涙を、霊夢もパチュリーも止めることができない。 涙声を絞り出す。 「これからも……わ、わだじだぢのぶんま゛で、ゆ゛っぐり゛じでい゛っでね゛!!!」 後には、二匹の押し殺した嗚咽が低く響き渡っていた。 ……アリスの手のひらを、ゆっくり魔理沙の深いあえぎが伝わってくる。 心を押さえつけるその限界に、もはや余裕はない。 「おい、このままでいいのか、ゆっくり私! 違うだろ、このままでいいわけがないぜ!」 なのに、人間魔理沙が一人、熱く語りだす。 いつもはそこが大好きな部分なのに、たまらなくウザく感じるアリス。 魔理沙の言葉と、アリスの刺すような視線。 そのベクトルの異なる力に押し出されて、ゆっくり魔理沙は前に踏み出す。 「霊夢、パチュリー、もう一度よく聞いてね!!!」 こいつ、ばらす気か!? 言葉の強さに、思わず息を呑むアリス。 一際、その手の圧力を強めて睨みつける。 ゆっくり魔理沙は、体を震わせて叫んだ。 「これで、新しい友達とゆっくりできるよ!!! さようなら、大嫌いな霊夢とパチュリー!!!」 勝った! 緩みそうになる口元を必死に抑えるアリス。 「お前!」 「魔理沙、仕方ないわよ。この子の意思ですもの」 声を荒げる魔理沙を、アリスは完璧に沈痛な面持ちで制止した。 寂しげな笑顔だけを残して、後ろを向く二匹のゆっくり。 静かに遠ざかるその背中に、アリスが気を緩めたそのときだった。 「でも゛!!!」 隙をついて、アリスの手から逃れたゆっくり魔理沙が二匹の下へ転がって走っていく。 その声に振り向きかけた霊夢とパチュリーに、呼びかけるゆっくり魔理沙の顔は、堪えに堪えた涙でくしゃくしゃだった。 「だいぎらいな二人でも、い゛っじょに、ゆっぐり゛じだいです! だがら、い゛がな゛い゛でええええ!!!」 「……ま゛り゛ざああああああ」 暖かい涙をこぼして、ゆっくり魔理沙を迎え入れる霊夢とパチュリー。 再び三匹となった一群は、そのまま森の奥へ走り出す。 「ま、待ちなさい!」 「行かせてやれ、アリス」 追いかけようとしたアリスの前を塞ぐ、魔理沙の腕。 「アリスは、あいつの仲直りの口上が気に食わないかもしれないが、あいつも私に似て素直になれない奴なんだぜ」 いや、そんなことじゃねーよと、張っ倒したいアリス。 だが、魔理沙の次の言葉に追う気が粉砕された。 「ところで、アリス。私たちは親友だよな」 「え、えええ!? なに、なんなの、突然!」 一瞬で、ゆっくりのことが吹き飛ぶアリス。 湯気が噴出しそうな顔を手のひら抑えながら、魔理沙を見つめた。 「そ、そうね、親友かもしれないわね。見る人によっては!」 一緒にお風呂に入る、同じ布団で寝る、後ろからそっと抱きしめる。親友としてできそうなこと、あれこれ 妄想するアリスだった。 一方、魔理沙はぽりぽりと頭をかきだす。 「それじゃあ、許してくれるよな」 「へ?」 アリスが間抜けに呟く。 なにやら雲行きが怪しくなってきた。 「いや、明日あたりアリスに丸一日付き合うつもりだったけど、フランの奴がどうしても弾幕遊びがしたいって、 紅魔館から呼ばれていてさ。ほら、あいつ手加減できないから、私も丸一日付き合わないといけなくなる。悪いが、 丸一日付き合うという話自体、なかったという方向で」 「え、えええ!?」 「そういうことで、じゃあなー」 驚愕に硬直するアリスを置いて、自分勝手に青空へと飛び出していく魔理沙。 一人佇むアリスの頬を、冷たい風が草むらを震わせて流れていく。 「……一人に、なっちゃった」 寂しげな呟きも、風の音にまぎれて消えていった。 三匹のゆっくりは、ゆっくり霊夢の寝床に身を寄せ合っていた。 うっそうとした藪の奥の、風の穏やかな洞。 すでに日は没し、暗がりに包まれてはいたが、アリスの家のように閉じ込められる寒々とした暗闇ではない。 傍にいる仲間の温もりが嬉しい、心地よい闇。 一息ついた三匹は目線を交わし、深く身を屈め、揃って一気に飛び上がる。 「ゆっくりしていってね!!!」 ゆっくり魔理沙の暴言も、仲睦まじい合唱に、しこりを残した気配もない。 これで完全に仲直り。 そして、あの魔女にさらわれる前の楽しかった日々に戻ったのだ。 こみ上げる幸福感に、ゆっくり魔理沙の頬を伝う幸せの涙。 「みんなと……ゆっぐりでぎで嬉じいい」 その涙は、ゆっくり霊夢とゆっくりパチュリーが舐めとった。 三匹は、かつてのように身を寄せ合い、そのまま眠りにつく。 夢に見たのは、野原を転げまわり、バッタを追っかけ、日向ぼっこでゆっくりと時を過ごす、幸せな明日の光景だろうか。 眠りこける三匹の元へ届くのは、月の光と梟の鳴き声。 だからだろうか、梟の鳴き声に似たその声を、聞きつけるものはいなかった。 それはどこかで聞いた、無機質な声。 「ホーラーイ」 夜陰に潜む、人形の呟き。 翌朝。 藁をしきつめた寝床で眠ったはずなのに、横たわるゆっくり魔理沙の体は、冷たさと固さを感じていた。 「ゆー?」 寝ぼけ眼が、次第に鮮明になっていく。 品の良い調度品、暖かな暖炉、そして棚を埋め尽くす人形の軍団。 「ゆっくり!?」 なぜ、アリスの家に。 飛び上がろうとする魔理沙。だが、天井を押さえつける透明なガラスの板に、飛び上がることもできない。 「ゆっ!」 悪夢がよみがえるゆっくり魔理沙。 ただ、依然と若干違うのは箱の構成。 横幅と高さはぴっちりとしているが、前後に細長くスペースがあって、少しだが動き回ることができた。 「あら、起きたの」 頭上からの声に見上げると、そこには穏やかな微笑を向けるアリスの姿。 ゆっくり魔理沙の体の色が、血の気を失って土気色。食欲をあまりそそらない色になる。 「ご、ごごごごごめんさい!!! もうしないから、ここから出してね!!!」 許されないことがわかっていながらも、必死に弁明を口にした。 だが、次のアリスの行動は予想外のものだった。 「出たいのね?」 アリスが蓋の留め金をいじると、苦もなく開くガラス箱。 箱の中に手が差し込まれて、ゆっくり魔理沙はアリスの手で引き上げられる。 「これは昨日、人間用につくったものなの。だからそれなりに余裕はあったでしょう」 こくんと頷くゆっくり魔理沙。誰のためにつくったのかは、怖くて聞けない。 そのまま、椅子に腰掛けるアリスの膝にのせられて、髪を櫛でとかされるゆっくり魔理沙。 昨日のことは夢だったのだろうかと思い始めた頃だった。 「あんな野原で寝るから、髪がぼさぼさになるのよ」 アリスの呟きに現実のことと知る。 そして、沸きあがる不安は、隣で眠っていた仲間たちのこと。 「ゆっくりしてたみんなは!!!」 「大丈夫よ」 アリスは親切に、ゆっくり魔理沙を抱えて窓辺へ。 そこには野外を元気に走り回るゆっくりパチュリーの姿が。 アリスの人形を一体頭にのせて、かつてない元気のよさで飛び跳ねていた。 それにしてもこのパチュリー、ノリノリである。 「霊夢はまだ眠っているみたいね」 アリスの言葉が示す通り、室内に向けられたゆっくり魔理沙の視界の端に、ソファーの影に隠れ気味にゆっくり霊夢の 頬が見える。 全員の姿を確認して一息つくゆっくり魔理沙を、アリスはくるりと向きを変えて真正面から見つめていた。 「それでお願いがあるのだけど、みんな、揃ってうちにきてもらえないかしら? その、私一人じゃ寂しいからね。 全員一緒にいたいなら、皆、面倒を見てあげるわ」 その提案に、魔理沙に広がる驚きの表情。 「もちろん、自由に遊びに行ったりしてもいいのよ」 それは、すごく嬉しいことかもしれない。 住人を除けば、暖かな寝床と美味しいご飯。素晴らしい環境なのだから。 それに、今のアリスはまるで憑き物が落ちたのかのよう。 微笑に陰りがなかった。 「うん!!! アリスも、みんなとゆっくりしようね!!!」 「まあ、嬉しい。ところで、昨日から何も食べてないからお腹が減ったでしょう。今、用意するわ」 言われて、ようやく空腹に気づくゆっくり魔理沙。 恐らく、緊張感が解けて感覚が戻ってきたのだろう。 「ゆっくり支度してね!!!」 「大丈夫よ、準備していたから」 魔理沙の気遣いに笑顔を返したアリスは、布をかけてあった皿を掴みあげる。 「私の知り合いに中国という方がいて、この前、料理を教えてもらったの」 魔理沙の前に差し出されるお皿。 「餃子っていう食べ物よ」 布が払いのけられて、アリスの言う餃子が姿をあらわした。 ふわりと漂う香ばしさと、こんがりと狐色の焦げ目が、ゆっくり魔理沙の食欲をそそる。 「わぁ、美味しそう!!! おねえさん、これ本当に食べていいの!!!」 「あなたに食べさせるためにつくったのよ」 アリスの笑顔に後押しされ、その餃子にむしゃぶりつく。 ほっくほくの皮。そして中の具から染み出す旨みにと甘さが、ゆっくり魔理沙の口に広がっていく。 「うっめ!!! メッチャうっめこれ!!!」 「ふふふ」 素直な反応が嬉しいのか、満足げに魔理沙の髪を撫でるアリス。 だが、皿をも嘗め尽くす勢いで餃子を貪っていた魔理沙が、ふと動きを止める。 「おねえさん……」 その声は震えていた。 「この餃子……なんかおかしいよ……シュっご……く……」 ぷるぷると身を震わして、半開きの口からだらしなく流れるよだれ。目じりにたまる涙。 「どうして? 慣れている味だと思うのだけど」 アリスは、その魔理沙をテーブルにのせて、静かに立ちあがる。 向かう先には、ソファー。そして、その影には未だ眠り続けていると聞くゆっくり霊夢の姿があった。 「だって、ほら」 ソファーの影から、けりだされるゆっくり霊夢。 いや、霊夢だろうか。 そのゆっくりは、額から上を切り取られていたため、アリスには見分けがつかない。 それでも、魔理沙にはわかったようだ。 「れ゛い゛む゛ううううう!!!」 ゆっくり魔理沙の声が聞こえたのか、ぶるんと震えるゆっくり霊夢の体。 「ゆっゆっゆっゆ」 しかし、目をひんむいた霊夢が壊れたうめきをあげるだけ。 アリスはその霊夢を、真上から覗き込んだ。 「大分減ったわね」 まるで、米びつを覗き込んで嘆息する主婦のよう。 少なくとも、生き物に向ける口調ではなかった。 「おねえさん、霊夢を、霊夢の中身をどうしたのおおお!!!」 「あらあら、知っているくせに」 わき上がる、ケラケラと抑えの利かないアリスの笑い。 「今は、あなたの口の中よ」 一瞬の沈黙。 「ぱぴぷぺぽっ!!! ぱぴぷぺぽおおおお!!!」 絶叫と共に、やみくもに壁にぶち当たろうとするゆっくり魔理沙。 「ゆっ!?」 だが、アリスが目配せすると、それまで棚を飾っていた人形たちが一斉に魔理沙に襲い掛かる。そのうち一匹の手には、 細く鋭い釘。 「ひぎい!」 ゆっくり魔理沙は床に縫いとめられていた。 「あらあら、お友達とお揃いになったわね」 アリスは視線を魔理沙から外し、窓の外で。 そこでは、相変わらずゆっくりパチュリーが走り回っていた。 青白い顔で、息も絶え絶え、涙とよだれを垂れ流しながら。激しく咳き込んでは、びくりと跳ね起きてなおも走り続ける。 そのゆっくりパチュリーの頭の上には、無表情の上海人形。手には五寸釘の根元を握る。その先は、ほとんどの部分が ゆっくりパチュリーに埋め込まれていた。 かろうじて走り続けていたパチュリー。だが、息を切らせてとうとうへたりこんだ。 「あああああ!!!」 途端に、ぐりぐりとひねりこまれる五寸釘。 のけぞって、いやいやと首をふるゆっくりパチュリー。 「や゛め゛で、や゛め゛で! 走りますう!!!」 のたうちながら、よたよたと動き出す。 べしょべしょの顔を濡らしながら感動のフル24時間マラソンはいつまでも続いて行くようだ。 けれども、パチュリーの体力と持病はそれを許さない。 「げほっ、がはっ……!!! ゆっぐり、じだいいいい!!!」 咳き込んで、のたうつパチュリー。 上海人形はアリスの指示通り、無表情のまま五寸釘でえぐる。 「む゛ぎゅーーーん!!! ゆっぐりでぎないよおお!!!」 パチュリーが泣き叫ぶ先には、窓辺に腰掛けるアリスの姿。 だが、アリスは背をむけていて、もはやその姿を見てもいない。 「……本を餌に魔理沙を釣る女と、同じ格好をしているのが悪いのよ」 死刑宣告に等しい言葉を吐き捨てながら、アリスは床に這うゆっくり魔理沙へと、かがみこむ。 「ところで魔理沙。あなたの一番好きな子を教えて。誰にも言ったりしないから」 なぜか、年頃の女の子のようなことを聞く。 だが、ゆっくり魔理沙にはわかっていた。 ここでアリスの名前以外を挙げれば、その相手は死ぬ。 「アリスが、アリスが一番大好きだよ……ぶぎゃっ!!!」 魔理沙の懸命な言葉は、口にねじ込まれたアリスの靴先に遮られた。 ゆっくりと靴を引き抜くアリス。 「だぜ、よ」 修正点を手短に伝えた。 「うん! 魔理沙は、アリスのことが誰よりも大好きだぜ!!!」 「……もう一度」 「アリスが大好きだぜ!!!」 その言葉にぷるぷると震えるアリス。 「ああもう、嬉しいわ!」 言うなり、渾身の力でゆっくり魔理沙を抱き上げるアリス。 締め上げられながら、魔理沙は一言も声をあげない。 ゆっくり魔理沙は、諦めていた。 ここにいることしか、もう自分は許されないのだと。 誰かに助けを求めると、その誰かが不幸になってしまう。 「アリス、ずっと一緒にいるぜ」 呟きながら、ゆっくり魔理沙は思う。 零れ落ちる涙も枯れてしまえばいいのに。 涙で滲んでぼやける視界。 その中で、幸福そうに微笑むアリスだった。 こうして、アリスとゆっくり魔理沙の幸せな毎日はまだまだ続いていく。 めでたし、めでたし。
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前? 喫茶店で昼食を済ませた後は、適当に町をぶらついた。特に事件も無く、ゲラ子の耳を結んで遊んでいた悪ガキに拳骨をくれてやるくらいだった。 日が沈んできた頃、そろそろ自宅(事務所)に戻って夕飯を食べて、日誌とお上への報告書でも書いて寝ようと思い、喫茶店のドアを開けた。 朝からずっと入り浸っているのがいれば、紅茶やコーヒーで酔えるのか顔を紅潮させているのもいる。 「よぉ、儲かってるねぇマスター!」 「ケッ、人数の半分も儲けてねぇよ」 「この町も経営が乗ってきたんだ。もう少しの辛抱さね。オーダーはカレーとニンジンにするわ」 この町で取れる様になった鉱石は高く売れるのだが、最近まで掘削の費用がかさんで金欠状態になっていた。 道具も技術も確立し、商売先も安定したのでそろそろ町人の懐が温まってくるだろう。 都市の人間はここの町人を賊を見る様な眼で見るが、私にゃ人情深くて良い連中だ……と思う。 育ちが良いからってエバるし、こっちより肥えてる癖にツケの一つも許しちゃくれない。 「へい、お待ち!」 カレーとニンジンスティックとトマトサラダが運ばれてきた。ゲラ子はサラダを指差し笑いだした。 「カレーとニンジン以外の金は払わないよ」 「そのサラダはゲラ子ちゃんに俺からの奢りだ」 『ゲラゲラゲラゲラ!』 ここのマスターはゲラ子にだけは甘い。どんな客でもツケはするが、奢りはしなかった。 当のゲラ子も気に入っているらしく、私を除けば唯一懐かれている人物だろう。 調子付いてきたのか、私を指して笑いだした。流石にカチンときたから大きくあけたスイカ口にカレーを突っ込んでやった。 『~~ッ!? ~~ッ!!』 「ゲラゲラゲラ!」 ゲラ子は声にならない叫びを上げながら、ゆっくりらしからぬスピードで走りまわった。 それに対し、私はお株を奪ってゲラゲラと指差し笑ってやった。周りもつられて笑いだし、一気に賑やかになった。 「そういやお前ぇ宛てに『ゆービン』が来てたぜ」 「私にゆービン?」 ゆービンとは、主にうーぱっくなどの空を飛べる種のゆっくりによる輸送法である。まぁ、手懐けやすさからうーぱっく以外に運び屋は務まらないだろう。 何でも、手紙などをビンに入れて運ばせたことが由来だとか…… ビンには粘土で栓がしてあった。中身は、古くなりすぎて触るだけで崩れそうな紙で書かれた手紙だった。 「何々? “けさわめゐはくおかけてすびはせんでした。おわびがしたぃのでもりまできてください……まりき”」 どうも、今朝のまりさかららしい。ただのならず者だと思ったが、誠意を表わしたいのなら無碍(むげ)にするわけにもいくまい。 それなりに知識もあるようだし、誠心誠意謝ってくれるのなら傷も目立たぬようにしてやるかな。 少量のお菓子と各種薬品を持参することにした。 「ゲラ子は留守番してな」 『ケラケラケラ』 「今日は満月だろう?」 『ゲラゲラゲラゲラ!』 留守番という言葉に疑問を覚えた様だが、すぐに理解したことを表す笑い声を上げた。 このゆっくりれいせんという種は満月の夜に最も活発に行動するらしく、いつも餅つきをするのが決まりになっていた。 軽く身支度をすると、マスターに留守を頼み出発した。 ―――ふもとの森 この森には薬草を採りにゲラ子を連れて何度か来たことがある。ゲラ子はあれで、薬草のことについては町の誰よりも詳しかった。 村からそんなに遠くない場所ではあるが、用もないのに来るにはかったるい。 そんな位置に森は存在した。入口には記憶に新しいまりさが震えながら待っていた。 捕食種が存在しないとはいえ、日が落ちてからも巣に戻らない姿勢はすごく真摯に見えた。 『ゆゆ?おねえさん!きてくれたんだね!!』 「ああ、悪いゆっくりをたくさんしょっ引いてきたけど、お詫びがしたいなんてのは初めてだからねぇ」 『まりさのおうちにしょうたいするよ! ゆっくりついてきてね!!』 「ああ、良いよ。運んであげるから道だけ教えてね」 それからしばらくの間、まりさの世間話(主に自慢話)を聞きながら指示どおりに歩いた。 だんだんと自分の知らない道にそれ、どんどん森の深くまではいって行った。 まりさが会話の中で、これからはこの森のみんなと一緒に暮らすことにしたと言ったところで、その事に気づいた。 『おねえさん、あたまのきずがいたむの。なんとかならない?』 「傷は残っちゃうけど、これを塗れば痛みは引くわ」 ズボンに取り付けている薬品入れから、青いチューブの軟膏を取り出した。 「帽子が邪魔だから、持ってるわよ?」 『ゆ・ゆ・ゆ♪ゆーゆーゆー♪ゆ・ゆ・ゆ♪』 薬を塗ってもらえるのが嬉しいのか、まりさは独特なリズムで歌い始めた。 ゲラ子以外のゆっくりの歌を聴くのは久しぶりなので、新鮮な気分になった。 ハテ?どこかで聞いたことのあるリズムだな。記憶の奥底に何か引っかかる物がある。 軟膏を塗ってやっている時、周りの茂みからガサガサと生き物の気配がした。 『『『『ゆっくりまりさをはなしてね!!』』』』 「お?おぉう?」 『『『『さっさとばうしをかえしてあげてね!このおばん!!』』』』 「な、なな……!?」 一斉に私を囲むようにして飛び出してきたのは、ゆっくりの群れだった。しかもそれぞれ前科者の傷を負っていた。 不意に頭に鈍い衝撃が走り、その場に倒れこんでしまった。何が起こった? 霞む視界の中で確認したのは、ゆっくり種の中でも重量級であるれてぃと帽子をかぶったまりさ。 『ふん!おばさんばかだね!!まりさにかてるとおもったの!?』 おまえは何を言っている? 『まりさのいったとおりにんげんってよわいでしょ! けさもみのがしてあげたのにのこのこしかえしにくるなんてほんとうにばかだね!!』 見逃してあげただって? 私はお前が詫びたいからと、手紙を受けたからここに来たんだぞ!? 『みんなでいけば、あのこぎたないまちをまりさたちのゆっくりぷれいすにできるよ!!』 『あそこにはにんげんにしたがってるぐずのゆっくりたちがいるからどれいにしようね!!』 私の故郷であるあの町が小汚い!? 人間と共存しているゆっくりたちが愚図だって!? 「お、お前……何を―――」 『しぶといばばあはえいえんにゆっくりしていってね!!』 上手く呂律が回らないうちに、まりさは口から煙幕の様な物を私に吹きかけ、続いて森中に響く程の口笛を吹いた。 間もなく、空が黒い影で覆い尽くされた。 『『『『『『うー♪うー♪』』』』』』 今まで見たことが無いほどのうーぱっくの群れだ。 既にゆっくりを積んだ者は、町の方へ飛んでいく。 私の鞭ならば、まだ叩き落とせる。 「このぉ――」 何とか起き上がり、鞭を振るおうと構える。 ……が膝がガクリと折れた。 しまった……この森には人間にも麻酔効果のある薬草が群生している。 揮発性が高く、主に嗅がせて使うものだが、それなりの知能を持ったゆっくりならば効能も知っていただろう。 しかし、目に見えるほどの濃度の使用例は聞いたことが無かった。下手したら二度と覚めない眠りに落とされるかもしれない。 「く、クソォ……」 死に物狂いで這い出し、ようやく煙幕から抜け出した。 まだ体中に痺れが残っていたが、持ち合わせていた気つけ薬で意識を失わぬ様にしながら町へと急いだ。 すでに第一陣のうーぱっくは町に降下していた。 「チクショウ……チクショウチクショウ! 間に合ってくれぇ!!」 思わず情けない声が漏れてくる。 いかにゆっくりと人間だと言っても、出だしで遅れ、慣れぬ道、不自由な体とハンデが揃っては勝負にならなかった。 他の者が心配でないと言えば嘘だが、町に残してきたゲラ子のことで頭がいっぱいになっていた。 ―――廃炭鉱町 恒例となった餅つきは、町の中央の広場でやることになっていた。 町の住人もこの時ばかりは、この広場に全員集まっていた。 それがアダとなり、町を外側から囲むように降下してきたゆっくりに気付くのが遅れてしまった。 例のまりさが指揮を執り、各地にあるゆっくり舎を占領し、労ゆっくりを人質に取った。 町人たちが異変に気づいたのは、人質の半数を引き連れたゆっくりに囲まれてからだった。 「お、遅かった――」 肩で息をしながら町にまで辿り着いた私は、その光景に目を疑った。 ならず者ゆっくりが町の施設を占拠し、真面目な労ゆっくり達を奴隷の様に扱っていた。 その中でも喫茶店は酷いものだった。 『れいむたちはおなかがすいてるんだから、ゆっくりしないでさっさとたべものをもってきてね!!』 『そんなことをしたらまちのひとがこまっちゃうよ! ゆっくりりかいしてね!!』 『ゆゆっ!?うるさいよ!ばかなにんげんたちのみかたをするやつはゆっくりしね!!』 『やっやべてびゅ!!』 『どうじでごんなことするのぉぉぉ!』 食べ物を催促し、逆らう者に罵倒を飛ばす者。 皿を割って遊ぶ者。 フォークで労ゆっくりを突き刺して笑う者。 様々な方法で、傍若無人に振舞っていた。 ふと、見覚えのある皿が目に付いた。 『ゆゆ? このおやちゃいはなぁに?』 『これはさらだっていうりょうりよ!とまとをつかってるからとかいではとまとさらだっていうわね!!』 『『む~しゃ♪む~しゃ♪』』 『あんまちおいちくないね!』 『いなかもののおろかでぐずなにんげんのにおいがするからよ!!』 『『ゲラゲラゲラゲラ!』』 小食なゲラ子のために、棚にとっておいたトマトサラダを赤れいむと親ありすが咀嚼していた。 途中で私の存在に気付いたらしく、旨そうに喰っていたにもかかわらずにサラダの皿を蹴落とした。 さらに二匹揃って、それに唾を吐き、こちらに嘲りの表情で大笑いした。 やめろ…… お前らみたいなド畜生が、ゲラ子と同じ様に笑うんじゃない! 私の中で何かが切れた。 床にぶちまけられたトマトが、張り付いた様に視界が真っ赤に染まった。 鞭をしならせ、眼前の二匹に向かって振るう。距離が離れていたが、先端がかすめるだけでも十分に致命傷だ。 『そのふたりにけがをさせたらこどものいのちはないよ!!』 ビシィッ! 背後からの声に我を取り戻し、鞭の軌道を曲げた。二匹の頭を掠めた鞭は側面の壁を抉った。 白目を剥いてガタガタ震えているが、二匹にケガはない様だ。 振り向けば、巨大れいむが昼の悪ガキの上に圧し掛かっていた。 『ぐずでおろかなおばさん! むだなていこうはやめてきりきりあるいてね!!』 巨大れいむの上に例のまりさが乗って支持を出した。 まるさが跳ねるたびに、呻き声が聞こえた。 指示通りに進むと、広場に出た。町人はみな広場の中心に集められていた。 本来ならば進化したとはいえ、ゆっくり如きは簡単に駆除出来る屈強な連中だが、私のせいで手を出せないでいた。 ゆっくりーだーのいる市町村の住人(ゆっくりを除く)は基本的に、許可が無ければ駆除することができず、あくまで悪いゆっくりを生け捕りにしなければならなかった。 その許可も私がお上に申請して、数日かかる。ルールを破れば全てゆっくりーだーの責任となる。 愛好家や労働力として重宝される様になってから、加工所としての資源の不足を補うための措置である。 周囲には理不尽な暴行を受け死んだのであろう、労ゆっくりの死骸が散らばっていた。 その中にはちらほらとならず者ゆっくりの残骸も混じっていた。 町人がやったので無いのならば、半ベソを掻いているゲラ子が手に持っている杵でやったのだろう。 衣服はボロボロで傷だらけ、肩で息をしながらも生き残った労ゆっくり達を守るように、杵を両手に仁王立ちをしていた。 助けられたのは二、三匹だけの様だ。 「お疲れさん、ゲラ子。あんころ餅はいくつできた?」 『ゲラ!ゲラ!ゲラ!』 「そうか三つかぁ」 周りのゆっくり達には数でやられたのだろう。 ゲラ子の頭を撫でてやる。髪の毛もバサバサになってしまっていた。 とりあえず応急処置をしてやろうと、先程の軟膏のチューブを取り出した。 『おばさん!なにかってなことしてんの!?ばかなの?ひとじちがいることをわすれないでね!!』 「こいつは怪我をしている。同じゆっくりなんだから治してやってもいいでしょう?」 『そんなゆっくりできないやつをまりさたちといっしょにしないでね!!』 「せめて人質を放してやってくれないか?」 『じゃあおばさんとげらげらうるさいやつのどっちかがしんだらはなしてあげるよ!!』 遠まわしに言ってるが、ありゃ私とゲラ子で殺しあえと言っているに等しかった。 せめて人質さえ取り戻せたらと思い、質問したが墓穴を掘ってしまったかな? しかし、追い詰められている時に限ってまともな考えが出てこない。 了承する前だと言うのに、既に町中の野良ゆっくり達は私とゲラ子の周りに集結していた。私達に選択権は無いらしい。 「絶対に何とかするからこれから何が起こっても、私とゲラ子、そしてこの野良達に手を出すんじゃないよ!」 グイグイと円の中央へ追いやられる私は、最後に町人達に釘を刺した。 日ごろの行いが良かったお陰か、みんな私の言う言葉に静かに頷いてくれた。 少し離れた所にゲラ子が杵を構えて、ガタガタ震えていた。 「ゲラ子ぉ~あなたは私の力を知ってるよねぇ~」 『―――!』 私は薬品入れから、黄色いテープが貼られた小瓶を取り出し、これ見よがしに握り割った。 野次馬のゆっくり達はそれを見るなりザワザワと、震えだした。 ゲラ子は対照的に、震えが止まった。 他のゆっくり達にはともかく、ゲラ子は気づいてくれたようだ。 『ごたくはいいからさっさとはじめてね!!』 痺れを切らしたまりさの怒声が、合図となり二人同時に飛び出した。 ビチィッ! ドゴォッ! 一瞬の出来事だった。 そこに立っていたのはゲラ子だ。 振るわれた鞭より早く、杵が頭に命中したのだ。 「うげぇ……」 情けない呻き声が口から洩れる。 私は力なく、ドサリと崩れ落ち、意識が遠のいていった。 『ほんとうにしんでるかたしかめてね!!』 巨大れいむの上から見下ろしていたまりさが下のゆっくり達に確認を取らせる。 何匹かのゆっくり達が恐る恐る近づき、つついたり、かじったり、上に登って跳ねたりした。 仕上げにれてぃを上から落としても無反応だ。 『『『ほんとうにしんでるよ!!』』』 うれしい誤算だ。 首謀者のまりさはニヤリと口元を歪めた。 朝の仕打ちを見る限り、勝つのは人間だろうと思っていた。 制圧する上で最も邪魔な存在が消えたのだ。 残ったのは笑うしか能がない愚図に、まりさたちに手を出すことができない町人。 あさやられたのはたまたまだったんだ! まりさよりつよいやつはいないんだ!! もうここは、まりさたちのゆっくりプレイスなんだ!!! 『ふん!なにが“いちばんつよいのはわたしなのよ”だ!まりさよりよわいくせに!!』 『みんな!もうここはまりさたちのゆっくりぷれいすだよ!!』 『うーぱっくもここをすきにしていいよ!!』 『おろかなにんげんはさっさとでていってね!!』 物言わぬ死体に罵倒し、その上を誇らしげに跳ねた。 まりさが『じぶんのまち』宣言を上げると、ゆっくりたちは町人を追い出すようにジリジリと町の入口まで追いやる。 報酬を待ちわびていたうーぱっくの群れは、ようやく畑として実り始めた作物に向かって飛んでいく。 『『『『『『うー♪うー♪』』』』』』 ヒュン―― 『『『『『『う゛ー!う゛ぁぁぁああ!』』』』』』 空を切る音と共に、うーぱっく達の断末魔の叫びが響いた。 『ゆゆ!?』 まりさが振り向き見たものは、正に地獄絵図だった。 五十匹近くのゆっくりを運んだうーぱっくは、目標である畑が近かったので低空飛行をしていた。 そのことごとくが、黒い旋風に細切れにされ、叩き落されていた。 旋風を起こしていたのは先程死んだはずの人間だった。 いや、鎌こそ持っていないがあれではまるで妖怪の…… 『かまいたち……』 「ゲラゲラゲラゲラゲラ!」 『ゲラゲラゲラゲラゲラ!』 女はうーぱっくを切り刻みながら笑い、ゲラ子は狼狽するまりさを指差し笑った。 ゲラ子の眼は紅さを増し、怪しい眼光を湛えていた。 うーぱっくを打ち落とし終えた女が、ゆっくりと振り返り目が合った。 口は三日月の様にニュッと歪み、眼はゲラ子と同様に紅く光っていた。 『どぼじでいぎでるのぉぉぉ!?』 目先のことしか見えぬゆっくり達には一生分かるまい。 先ほど砕いた薬瓶の中には、このまりさも使用した麻酔が入っていた。 適量のそれを吸い、死体の演技をしていたという訳だ。 『み゛んな゛かたぎをうづよ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!』 まりさは震えを抑え、指導者としての最後の号令を出した。 『う、うそだぁ……』 『ゆ゛ぅ、ゆっぐぢぢゃぢぇでぇぇえ!』 『あがぢゃんは、ばびすぐぁまもるがらねぇぇ!!』 今まともに動いている野良ゆっくりは三匹。 首謀者のまりさと、喫茶店で私を嗤った赤ゆっくりと親ありすだ。 ありすはどうやら、真っ先に突っ込んできた巨大れいむとのつがいだったらしかった。 今では目と口の間から横一文字に両断されてしまっているが…… 「ふう……久しぶりに大声出して笑っちゃたわ」 『よぐも゛――』 「ん?」 『よぐもべびぶをごろじだな!ゆっぐりじねぇ!!』 「あらぁ?ウフフ、人聞きがわるいわぁ。私は一匹も殺しちゃぁいないわよ?」 『うぞづぐなぁぁ!』 分かったわよと、ありすを巨大れいむの前に運ぶ。 横薙ぎに払われ、上の部分がずり落ちそうなところで乗っていた。 「ほぅられいむ、愛しのありすちゃんよ?』 優しい猫なで声でれいむの髪を撫でてやる。 不格好なダルマの様に巨体が揺れた。 『……あ゛…り………ず』 なんとれいむは捻りだす様な声を絞り、涙を流した。 『れ、れいぶ!?びゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』 『どぉぢでぇぇぇぇぇぇぇぇぇええぇぇぇぇ!!』 『にんげんはおろかで、ぐずで、まりさのあしもとにもおよばない……』 それを見たありすは絶叫し、赤れいむもそれに続いた。 その様子をまりさは呆然として眺め、ぶつぶつとうわ言を流していた。 私はありすと赤れいむを上に放り投げ、鞭を二回しならせた。 二匹は空中でど真ん中から両断された。 その瞬間から皮の再生が始まり、落ちてくる頃には四つの饅頭片となっていた。 再生する際に、少しでも接点があれば巨れいむの様に奇形になるだけですんだだろう。 『『びゃっ……びゅ…』』 餡子が無くならなければ死なないと言うのは本当らしく、饅頭片となった今でもピクピクと動き奇声を発している。 その饅頭片をかき集め、巨れいむの眼前に置いてやる。 「ウフフ、末永くお幸せにね」 『まりさは、まりさは……』 なんでまりさはこんなばかなことをしたんだろう? いたいめにあったばかりではないか、なぜかてるとおもったんだろう? おおぜいいたから? ちがう みんないちどにんげんをだしぬいたことがあるから? ちがう! どんなにこうげきされてもたおされないじしんがあったから? そうだ!! あのときなんどもたたかれてもまりさにきずはのこらなかった! むきずでかえることができたんだ! むきずならまけるわけがない!! なのになんで!? 「ねぇ?まりさぁちゃん?」 『ゆ゛!?』 声をかけられ、まりさは我に返り無残な現実に引き戻された。 まりさはこの時心底後悔した。 愚かしくも今になって、後頭部の火傷が痛み出したのだ。 そして、傷の残らぬ痛みがどれほど恐ろしいかを理解した。 『おね゛ぇざん!』 「なぁに?」 『ばりざにはやけどびだいなきずがづぐようにおじおぎじでぐだざい!!』 「わかったわぁ」 まりさの反骨精神は粉々に砕かれていた。 私は少々残念な気もしたが、仕方がない。 まりさの意見を尊重することにした。 まりさを町のトーチに入れ、帽子に油を染み込ませ、火種を落とした。 『ゆぎゃ―――』 悲鳴は最初の一瞬だった。 全身に火が回ったまりさは、焼きつく度に火傷が回復し、再び焼き付くの連鎖を始めたのだ。 同じ量の薬でも使う個体によっては、効き目が違うと聞いたことがある。 鞭から摂取した分だけでも既に全身に馴染んでしまったようだ。 パチパチとまりさの焼ける音のみが聞こえていた。 「ゲラゲラゲラ!」 『ゲラゲラゲラ!』 一晩明けて、町中には悲惨な野良ゆっくり達で溢れていた。 痛みを訴えるもの、なんとかもがいて逃げようとするもの、餡子を吐いて自殺しようにも体が歪みすぎてそれすらできないもの…… 「なぁ、マスター。私このケジメを付けたらこの町を出て行くわ」 「何だよ突然」 「見聞を広げたくなったの。そして探しものもね……」 正直に言うとあれだけの大立ち回りをしたのに、ほとんど何も覚えていないのだ。 しかし、やったことの重大さは理解している。 そして、これまで持っていた信念が揺らいでしまった。 少しでも償うために、私にできることはまず町の復旧だ。 次には、世界を回り、各地のゆっくりの姿を目に焼け付け、最良の関係とは何かを知ることだ。 「それが見つかれば、すぐにでも戻ってくるわぁ」 最後に、この組織の大元を知ることだ。 もし噂どおり、ゆっくりを品物として扱っているのならば、それを見極めることだ。 傷物である前科者はそれこそ、思いもよらぬような実験の材料としているという噂もある。 こんな哀れなゆっくりをこれ以上世界に出してはいけない。 独善的と言われれば、否定はしない。ただ、この目で確かめたいだけなのだ。 今思えば、あの新聞の少年に抱いた思いも、ただ羨ましかったのかもしれない。 「ゲラ子ちゃんを大事にしなよ」 『ゲラゲラゲラ』 「この子は私なんかよりもずっと強いわよ」 それからしばらくし、町が以前と同じ状態に戻る頃、この町から一組の流れ者ゆっくりーだーが誕生した。 それを見送る様にトーチの炎が一瞬大きく煌いた。 ~ゆっくりデータファイル~ No.3 ゲラ子(ゆっくりれいせん種) 能力:はっきり言って未知数。現在でも珍種とされ、目撃例すらほとんど無い。 人の言葉を話すことができず、口を開けば常に笑う。 意外と博学な面があり、特に薬草の知識には目を見張るものがある。 体付きとしては珍しく、道具を使用することができる。 特殊:『狂気を伝染させる程度の能力』 普段は温厚なゲラ子だが、強い精神的ショックを受け、狂気に駆られると発動する。 近くにいる人間(主にパートナー)に狂気が伝染する。 ちなみにこの能力は本人は知らないし、伝染した者もその間の記憶を無くす。 備考:満月の夜に活発に個体ごとの行動を取るらしい。(ゲラ子の場合、餅つき) 今後はこの個体を観察していく上で解明されるものがあるだろう。 No.4ならず者まりさ(ゆっくりまりさ種) 能力:まりさ種で言う裏切り等の、短所が見事に欠落している。 持前の身体能力の高さとリーダーシップで、ならず者ゆっくり達をまとめ上げた。 特殊:「遠くの味方に命令を出す程度の能力』 本作中では歌や口笛として使用している。歌のリズムは某信号から 特殊2:「どんな傷でもすぐに治る程度の能力」 先天的な能力ではなく、外科的に付与された能力。 その名の通りの能力で、強力すぎるがために悲劇を生んだ。 備考:本作品の序盤のセリフに嘘偽りはなく、仲間のための行動だった。 新たな能力に目覚めなければ、もっと違う結末になっていたかもしれない。 後書き ようやく、後編が完成しました。 薬品ネタとまりさの結末から作っていったので、変に疲れた。 描写が伝わりにくくしてしまったかもしれない。 どうしても救いのある話にしたかったので、後半の描写はイランて人が多そうだなぁ…… ネタ切れなので、虐待スレを見てビビッときたらまた書きます。 このSSに感想を付ける
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※これは「ある復讐の結末(前)」の続きになります 目の前で復讐を横取りされた。 餡子脳の処理が追いつかない。 どう反応すればよいのかも分からない。 呆然とするゆっくりれいむより先に我を取り戻したのか、だぜまりさが興奮した声で命令した。 「れいむ! あのふらんのあとをおうんだぜ!」 「ゆっ!?」 その内容でなんとか我を取り戻した。 なんてことを言うのだ、こいつは。 あのクイーンありすをいとも簡単に殺したふらんの後を追えだと? 「ゆゆゆっ!! あんなふらんとたたかったらしんじゃうよ!」 「だれもたたかえなんていってないんだぜ! すまでついていくだけでいいんだぜ! くいーんありすをころしたやつはただじゃおかないんだぜ!」 つまり、尾行してやつの住処を暴け、と。 暴いた後は群れ総勢で報復をする。そういうことか。 しかしクイーンありすが死んだ今、れいむが言うことを聞く理由はない。 だが、ここで逆らったらどうなるか。あのふらんの仲間として殺されるかもしれない。 れいむとしてはクイーンありすを殺せれば死んでもいいと思っていた。 しかし、思ってはいても、『生きてもっとゆっくりしたい』という本能が、突然の出来事で錯乱状態にあったれいむを行動させた。 ふらんの後を追ったのである。 「まりさはこのことをどすまりさにつたえにいくんだぜ!」 だぜまりさはれいむにそう言うと、うーぱっくに乗り込んだ。 だぜまりさの命令に従いうーぱっく達は飛翔する。 だぜまりさ、眠っているゆっくりれいむ、ゆっくりまりさを乗せたうーぱっく三匹は巣へと向かって飛んでいった。 あれだけのスピードを出すふらんだから、簡単に見失うかと思ったが、そうでもなかった。 食後で体が重くなったのか、狩りの時じゃないからなのか、非常にゆったりとした速度でふよふよと飛んでいたためれいむでも追うことができた。 ふらんはれいむに気づいていないようである。 木々が生い茂る森の中を進んでいく。 ふらんはすいすいと木々の間の縫って飛んでいる。ゆっくりれみりゃとは大違いだ。 れいむは追っているうちに徐々に錯乱状態から回復した。 このまま行方をくらませてもいいんじゃないだろうか、と考えた。 だがすぐにその考えを振るう。ここで行方をくらませたら間違いなくふらんの仲間と思われる。 そうすればドゲスまりさは絶対にれいむを許さないだろう。 ドゲスまりさの群れは大きい。ゆっくりが生きている場所の七割を掌握している。 奴らに見つからずに生きていくことは不可能だ。すぐに見つかって殺される。 クイーンありすの殺害が思わぬ形で実現された今、れいむの中に残っているものは何もない。 何もないから、本能が生きろと叫んでいる。 今や復讐を決意していた時より生きたいと思っていた。 やがてふらんが木々を抜けた。 れいむは見晴らしのよい場所に出て見つかるのを防ぐため、木の陰に隠れてふらんの様子を窺うことにした。 「ゆっ?」 木々を抜けてふらんが向かう先には、洋風の家があった。 人間の家だ。 れいむはこっちの方向へは来たことがないから知らなかった。不可侵条約のため人里の方へは来たことが無かったからだ。 その家は人里からは離れているが、ドゲスまりさの群れの本拠地があるところから見れば人里寄りである。 まさかあの家が……。 そう思っていると、本当にふらんはその家に向かっているようだった。 「う~~」 と、ふらんがドンドン扉を叩く。 家の中でバタバタと音がした。 数秒の後に扉が内側から開かれ、人間の若い男が姿を現した。 「やぁ、ふらん。お帰り~」 笑顔でふらんを出迎える青年。 「う~、ただいま~」 ニコニコと微笑む青年の脇を通り過ぎ、家の中へと入っていくふらん。 青年はふらんが家の中に入ったのを確認すると、扉を閉めた。 間違いない。あのふらんは人間の飼いゆっくりだ。 つまりは、どういうことか。 人間の所有物がゆっくりを殺した。つまり人間がゆっくりを殺したことと同じ。 すなわち、不可侵協定を破ったこととなる。 この事がドゲスまりさ達に知れたらどうなるか。 決まっている。ドゲスまりさはここぞとばかりに人里へ攻め入るに違いない。 先代ドスまりさが人間達と結んだ不可侵協定を、ドゲスまりさは一応は守っていた。 いたが、ドゲスまりさを含む多勢のゆっくり達は、隙あらば協定を破棄し人里を襲おうと思っている。 人間が先に協定を破ったと分かったら、ドゲスまりさは大義名分を得る。 「そちらが先に破ったのだから」と嬉々として攻め込むに違いない。 そうなったら地獄絵図だ。 人間達も当然反抗する。いくらドゲスまりさが大の人間の大人より強いといっても、大人数を相手にすれば殺される。 だがドゲスまりさもドスパークを持っているうえ、群れのゆっくりは数が多く血気盛んだ。 人里側もただならぬ被害を被ることになるだろう。 それだけじゃない。れいむは今やドゲスまりさの群れの一員だ。自分も殺されてしまう恐れがある。 ここで寝返って人間側についたら? いや、やつらは裏切り者を絶対に許さない。真っ先に自分を殺しにかかる。 どうしよう、どうしようと悩むゆっくりれいむ。 いっそふらんが人間の飼いゆっくりじゃなければいいのに、と思った。 思って、閃く。 そうだ、まだ家の中に入っただけで飼いゆっくりと決まったわけじゃない。 ただ人間と仲の良い野良かもしれない。人間の家の庭に居つく野良猫だって居ると聞く。 そうだ、それを確認しなければと。 それは問題を先延ばしにしているだけだったが、先ほどからの突然の事態の連続でれいむはそんなこと考える余裕も無かった。 気づいたらふらんが入った人間の家の前に居た。 「ゆっ~、ごめんくださ~い」 言った。 言ってから、気づいた。 訪問する理由がない。 素直にふらんを追ってきたと言うわけにはいかない。 人間側にもそっちが不可侵協定を破ったことを気づかれるわけにはいかない。 じゃあなんでこの家に来たのか、ということになる。 は~い、と中から声がする。 どうするどうする。れいむは焦るがいい答えが出てこない。 どう言えば怪しまれない。 答えが出ぬまま、扉が開かれた。 「はいはいっ、と。……おや? ゆっくりれいむじゃないか。どうしたんだい?」 「ゆっ、ゆ~……ゆっ~~」 頭がゴチャゴチャだ。ゆっくりの餡子脳じゃいい答えが出てこない。 考えても考えても答えは無い。 だから、本能に従った。 「ゆっ! おにいさん、おなかすいたよ! おかしちょうだい!」 言ってからその理由はないだろう、と思ったが、驚くことに青年は快くれいむを中に招きいれ、お菓子をくれた。 出されたみたらし団子を、ゆっくりれいむは机の上でゆっくりと味わいながら食している。 「む~しゃ、むしゃ~、しあわせ~~」 人間の食べ物を食べたことがないれいむにとって、それは天にも昇る美味しさだった。 あまりの美味しさに嬉し涙が出るほどだ。 「気に入ってもらえたのなら、何よりだよ」 青年は椅子に座りながらニコニコと団子を食べるれいむを見守りながら、自分も串にささったみたらし団子を食べている。 「ゆっ、おにいさんありがとう!」 心の底から感謝の言葉を言う。 そこで、思い出した。自分は何のためにここに来たのか。そして、ここには何がいるのかを。 視線を青年の後ろに向ける。 青年の背後では、ゆっくりふらんがベッドに座ってうとうととしていた。 れいむの視線に気づいたのか、青年が優しく口を開いた。 「あぁ、怖がらなくて大丈夫だよ。ふらんにはゆっくりを襲わないよう言いつけてあるから」 さっきクイーンありすを襲ったじゃないか、とは言わなかった。 青年の前では襲わず外では襲っているのか、と思った。 「ゆっ、あのふらんおにいさんといっしょにすんでるの?」 「そうだよ。僕はゆっくりが大好きなんだ。人はぼくを『愛でお兄さん』とも呼んでるね」 朗らかに笑いかける青年の言葉に、れいむは期待を裏切られた気分になった。 もしかしたら、と思ったがやはりふらんは人間の飼いゆっくりだった。 隠し通せるだろうか。ふらんがクイーンありすを襲った事実を。 無理だ。たとえ人間側が重く見て無くても、ゆっくりにとっては大事件だ。 少なからず他のゆっくりによってクイーンありすが死んだことが人間側に露見する。 その時、ふらんが襲ったことが分かったら? そのことを、れいむが黙っていたと知れたら? 言っても言わなくても自分にとっては不利にしかならない。 どうしようもない。 何かこの状況を打破する手は無いかと家の中を見渡す。当然そんなものは無いのだが、あるものに目が留まった。 人間だ。愛でお兄さんと同じ年ぐらいに見える男だ。家の隅で椅子に座ってじっとしている。 その眼光は鋭く、恐怖を感じる。 「ゆっ、ゆっ~?」 「? あぁ、彼かい。気にしなくていいよ。僕の知り合いさ」 愛でお兄さんは怖がらせないようにれいむに優しく言った。 だが、その鋭い眼光はれいむを見ている。怖い。 何がそこまで怖がらせるのか分からないが、れいむは本能のところで恐怖を感じていた。 ドゲスまりさの群れの本拠地である巣に、一匹のまりさが慌てて戻ってきた。 ゆっくりれいむの共にいただぜまりさだ。 うーぱっくに乗っていた方が速いのだが、自分の足で走れないのがもどかしいのか地面に近くなったところでうーぱっくから飛び降りた。 そのままだぜまりさはドゲスまりさの所へ向かって全力で走る。その後ろの眠ったれいむとまりさを乗せたうーぱっくがついていく。 周りのゆっくりが何事かとだぜまりさを見るが、だぜまりさはそんな視線も撥ね退けて一目散に巣の奥へと向かっていった。 「どすまりさ! たいへんなんだぜ!」 巣の最奥にドスまりさとクイーンありすの寝床がある。 いつもドスまりさとクイーンありすはそこでドッシリ構えているのだ。 『そんなにあわててどうしたんだぜ』 ニメートルを越す巨体から遠雷のような重く低い声が響く。 だぜまりさはその威圧に少しのけぞるが、それどころではないと慌てて報告する。 「く、くいーんが! くいーんありすがころされたんだぜ!」 『ゆゆっ!? それはほんとうなのかだぜ?』 「ほんとうなんだぜ! ふらんがひきょうにもふいうちでくいーんをころしたんだぜ!」 『な、なんだとぉぉぉ!!!!!!!!』 ドゲスまりさの怒声が巣中に響き渡る。 間近にいただぜまりさはもちろん、寝床の外にいたゆっくり達もそのあまりの大音量に身を竦ませた。 「あ、あんしんするんだぜ! れいむにふらんのあとをおわせたから、もうすぐつかまるんだぜ!」 『ゆ゛ぅぅぅぅぅぅ!!! さっさとそのふらんをここにつれてくるんだぜ! どすまりさがじきじきにころしてやるんだぜ!』 「わ、わかったんだぜ!!!」 あまりのドゲスまりさの怒りに恐怖を覚え、だぜまりさは慌てて寝床を飛び出し、まわりのゆっくり達にクイーンありすが死んだ旨と、ふらんをここに連れてくるよう命令を下していく。 だぜまりさに付いてきたうーぱっくは、どうしてよいか分からず、今回の仕事で飛び疲れたのかそのまま眠ってしまった。ドスまりさも特に何も言わなかった。うーぱっくに直接的な戦闘力はあまり無いし、その二匹のうーぱっくは昨日から働かせ詰めだったからだ。 巣の中は騒然となった。 皆一丸となってだぜまりさの命令に従い出立の準備を整える。 そこへ一匹のうーぱっくが飛んできた。 それはだぜまりさが巣に戻る際、空中ですれ違ったうーぱっくで、れいむの後を追ってどこへ向かったのか知らせろと命じたものだ。 うーぱっくの知らせによりふらんが人間の飼いゆっくりであることが判明した。 この事に普段から人間への反抗心を持っているゆっくり達は憤慨し、一様に敵意をみなぎらせる。 ドゲスまりさを除く群れの八割のゆっくりが人間の家へ攻め込むことになった。 ふらんを飼う人間を叩きのめし、ふらんをドゲスまりさの前にひったて、その後人間を殲滅する。 総勢四桁にのぼるゆっくりの群れが、怒りと殺意をもって進軍していく。 向かうは、愛でお兄さんの人間の家。 全面戦争に発展するのは、時間の問題に思われた。 つづく ────────── あとがきのようなもの 書きかけの中篇もさっさと書きあげました スレで話題になってましたが、自分は研究所の人ではありません 混乱させてすみません。 自分はこれまで名乗ってませんでしたが、この作品を機に「キノコ馬」と名乗ることにします。 後編は明日以降になるかもしれません これまでに書いたもの ゆっくり合戦 ゆッカー ゆっくり求聞史紀 ゆっくり腹話術(前)(後) ゆっくりの飼い方 私の場合 虐待お兄さんVSゆっくりんピース 普通に虐待 普通に虐待2~以下無限ループ~ 二つの計画 ある復讐の結末(前) このSSに感想を付ける
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※これはfuku2240「ある復讐の結末後-1」の続きになります 「ゆっくりども!!!! 死んでくれ!!!」 虐殺お兄さんの発した声が、ビリビリと大気を揺らす。 筋骨隆々の鋼の肉体を持つその青年をれいむが恐れたのは当然。 彼の体には魂の髄にいたるまで、死んだゆっくりの餡子が染み付いているのだ。 「自殺するなら今のうちだぞ!!!」 虐殺お兄さんのその勧告に、ゆっくりの大軍は嘲笑で返した。 この人間はバカか。死ぬのはそっちの方だ、と。 「ならば致し方ない。虐殺だ!!」 虐殺お兄さんが槍を構える。竹と包丁という簡素なものであるにも関わらず、数多の血(餡子)を吸った呪いの武器のように見えてくる。 「さて、流石に僕は目の前でゆっくりが苦しんだり死ぬのは見たくないからね。家の中に入ってるよ。 終わったら呼んでください。ふらん、頼むよ」 「……このゆっくり、つぶしていいの?」 「ああ、そうだよ。そのゆっくり達はクイーンありすと同じく悪いゆっくりだからね」 「そう、うん。わかった」 大軍の相手はふらんに任せるのか、愛でお兄さんは扉を開き、家の中に入ろうとする。 だが体を半分入れたところで振り返り、 「ほら、れいむも早く」 れいむに呼びかけた。 このまま戦場にいれば裏切り者のれいむは危ない。身を守るために家に入れということなのだろう。 だが、れいむは断った。 「ゆっ! れいむはここでみまもりたいよ!」 「…………そうか。うん、分かった。ふらん、れいむのことを守ってあげてくれ」 「わかった。ともだち、まもる」 友達。 ふらんがそう言ってくれたことが、この状況でれいむにとってはこの上なく嬉しく頼もしい言葉に聞こえた。 愛でお兄さんが家の中に入っていく。 扉が閉まっていき、バタンと音を立てて閉められる。 その音を合図に、両者が動き出した。 「ゆっくりぢねぇぇぇぇぇ!!!」 「うらぎりものはじねぇぇぇ!!!」 「くいーんのかたきぃぃぃぃぃぃ!!!」 「ゆっくりできないれいむはしねぇぇぇぇ!!!」 「にんげんなんかまりさにかかればちょちょいのちょいなんだぜ!!」 千数百の饅頭の大軍が動いた。怒りと殺意に身を任せた突撃だ。 それに合わせて突撃していく虐殺お兄さん、虐待お兄さん。両者はあっという間に饅頭の絨毯に飲み込まれた。 ここに、戦いの火蓋が切って落とされた。 「あのおおきいにんげんをやっつけるよ!!」 「みんなでかかればあっというまだよ!!」 口に先の尖った木の枝や竹を咥えたゆっくり達が虐殺お兄さんに殺到していく。他にもその後方から石を咥えたゆっくりが続いていく。 そして遂に両者が戦闘圏内に入った。 ゆっー!! と掛け声をあげながらジャンプするゆっくり達。その口には鋭利な先端を向けた武器がある。 「愚か者め! 槍とはこうやって使うものだ!!」 暴風一閃。 虐殺お兄さんはその手に持つ槍を横薙ぎに払った。 それだけで先端の包丁部分で六匹のゆっくりが切り裂かれ即死。三匹が柄の部分で薙ぎ払われた。 圧倒的にリーチが違う。 その惨劇に後方から迫っていたゆっくり達がたたらを踏む。虐殺お兄さんはその隙を見逃さない。 動きを止めたゆっくり達を足で踏み潰し、槍で薙ぎ払い、石突で潰していく。 そのどれもが一撃でその命を奪われ餡子を散らしていく。 その様はまさに虐殺の権化。 「手もないくせに道具を使うとは、なんたる愚か!!!!」 右手一本で槍を振るい更に三匹のゆっくりを斬り飛ばしながら、左手で腰からクナイを引き抜く。 左手でクナイを投擲し、そのクナイは石を投げようとしたゆっくり達の眉間に見事に刺さり絶命させる。 わずか三十秒で五十匹のゆっくりが餡子を撒き散らした。 「ゆ゛う゛ぅぅぅぅぅぅ!? な゛に゛あ゛れ゛ぇぇぇぇぇぇ!!!」 「よぐもちぇんだぢをごろぢだなぁぁぁぁ!! ぢねぇぇぇぇ!!!」 今度は武器をもたないゆっくり達が大口を開き突っ込んできた。噛み付いてくる気だ。 しかしそれは、武器を持っていたゆっくりよりも愚かだった。 「なんだそれは、殺して欲しいのか!?」 武器を持つゆっくりよりも更にリーチが短い。 虐殺お兄さんの放った槍の刺突によってその口を貫かれる。高速三連撃。 まるで串団子のように槍に三匹のゆっくりが刺さった。虐殺お兄さんは槍を振るいその死骸を槍から抜き、飛ばす。 死骸によって視界をふさがれた、今にも突撃しようとしたゆっくりの息の根をまたクナイで止めていく。 虐殺お兄さんに近づいた饅頭は餡子に変わっていく。 だがそれも今のうちだとゆっくり達は思った。 戦闘開始から一分。正面からぶつかっていただけの戦闘は、いつの間にか虐殺お兄さんを包囲する形になっていた。 前方からではない。横、後方からも攻撃が出来る陣形となったのだ。 そして実際その通りとなった。 虐殺お兄さんが石を投げようとしたゆっくりに向かってゆっくりの死骸をぶつけているその隙を狙い、虐殺お兄さんの後方に回り込んだゆっくりが口の竹槍を構えて突進する。 この戦いにおいてゆっくりの最大の武器は数だ。 確かにゆっくりは個々の戦闘能力は低い。だが数が多ければ単純な戦力はもちろん、様々な戦術もとれるし、多数を相手にすれば少数の人間は、どれだけ強くても疲弊する。 戦争は数だと言ったのはどこの誰だったか。 二匹のゆっくりが見事に虐殺お兄さんの背後をとった。これはいくら虐殺お兄さんでも反応できないタイミング。 殺すことはできなくてもケガは追うだろう。そんな一撃が同時に二発。 ゆっくり達は既に勝利を確信していた。 だが、そんな思い上がった二つの饅頭は、横合いからの攻撃によって吹っ飛ばされた。 「「ゆぶべっ!!」」 「「「「ゆっ!?」」」」 その光景を見ていたゆっくりは驚愕する。 彼らは忘れてはいけない者を忘れていた。彼こそはゆっくりのゆっくりに対する反逆者。 ゆっくりをゆっくりさせないことに至上の喜びを見出す、ゆっくり最大の天敵。 虐待お兄さんである。 「後ろ、狙われてましたよ虐殺お兄さん!!」 「ちっ、私としたことが不覚をとった。すまないな、虐待お兄さん」 先の二匹のゆっくりを吹き飛ばしたのは虐待お兄さんのただの蹴りである。しかも蹴られたゆっくりは死んでいない。 ただし、逃げることも戦闘を行うことも不可能な状態にあるのだが。彼はあの一撃で殺すことなく戦闘能力を奪ったのだ。 虐待お兄さんと虐殺お兄さんは互いに背中合わせで構える。 これで死角はほぼ無くなる。ゆっくりにとっての有利が一つ消えた。 「ゆがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! にんげんのくせになまいきなんだぜぇぇぇぇ!!!」 「ひとりころすのもふたりころすのもかわんないよ!!!」 それに構わずゆっくりは雲霞の如く押し寄せる。 圧倒的数によって飲み込む気だ。 しかし、しかしだ。どれだけ多数いようとも、一度に襲いかかれる数には限度がある。 それもゆっくりにとって最大の天敵ともいえるような相手だ。背後の憂いがない以上、正面からくるゆっくりならばほぼ全て対応できる。 「ゆっ! ゆべっ! やべでぇぇぇぇ!!!」 「ゆぶぶぶぶぶぶ」 「ゆぼげぇぇぇ!!」 「やべでぇぇぇぇぇ!! ゆっぐり゛じだい゛ぃぃぃぃぃ!!」 虐殺お兄さんが悲鳴も残さず殺していくのに対し、虐待お兄さんは可能な限り悲鳴を残させて倒していく。 虐待お兄さんは徒手空拳。その全てが己の肉体から生まれる攻撃。 虐待お兄さんは正面、横からくる全てのゆっくりに対し、武術の達人顔負けの身のこなしでいなしていく。 虐待お兄さんの攻撃を受けたゆっくりは一匹たりとも死んではいない。全て餡子を吐き出したり痛みで気絶したりと戦闘能力を奪う程度に収めている。 滝のように襲い掛かるゆっくり達に対し、このような曲芸ができるとも、一重にこれまでの経験とゆっくりの愛故だ。 虐殺お兄さんに比べれば撃破効率は確かに低い。だが体が壊れて死ぬゆっくりに対し、虐待お兄さんが倒したゆっくりは原型を留めている。 それが戦場に倒れて残っていれば、後から進軍するゆっくりの邪魔になり、必然的にそれをどかそうとるすゆっくりが現れる。 そのため一時的に戦闘に参加されないゆっくりが生まれ、全体的な撃破の効率に役立っている。 「やべでぇぇぇぇ!! でいぶふんでいがない゛でぇぇぇぇ!!」 「ゆっ!! やくにたたないゆっくりはそのまましんでいくんだぜ!!」 もちろん、中にはそんなことを無視するゆっくりもいるが、 「ゆぶごべっ!?」 そんなゆっくりは虐待お兄さんによる念入りな虐待が行なわれる。 正拳一閃。動けないゆっくりれいむを踏み台にしたゆっくりまりさの口に虐待お兄さんの拳が突き刺さる。 「ひゅぅぅぅぅぅ!? ふぁりはのはふぁぁぁぁぁ!!(ゆぅぅぅぅぅぅ!? まりさのはがぁぁぁぁぁ!!!)」 そして脳天からの一撃によって大地に伏すまりさ。 平等に一撃ずつお見舞いする虐待お兄さんであったが、中でも屑なゆっくりには愛をこめて二連撃をプレゼントする。 一見非効率に見えるが、ゆっくりの放つ悲鳴によって虐待お兄さんのボルテージは上昇し、戦闘能力はアップするのだ。 「っひゃぁぁぁ!!! さぁ来てくれゆっくりたちよぉぉ!! 一緒にゆっくりしようや!!」 既に群れの一部のゆっくりは逃走を始めていた。 戦闘開始直後。 一部のゆっくり達は虐殺お兄さん達を狙わず、れいむの狙って殺到した。 もちろん、裏切り者への粛清である。 「よぐもくいーんをごろぢだなぁぁぁぁ!!」 「うらぎりも゛の゛ぉぉぉぉぉ!!!」 突出した二匹が挟み込むようにれいむの両側に回りこむ。 「ぢねぇぇぇぇぇ!!!」 同時に飛び掛るゆっくりまりさとゆっくりありす。二匹によるボディプレスによって押しつぶすつもりだ。 れいむはどうしてよいか分からずおろおろとするばかり。今にも潰されそうなその瞬間。 「ゆぶっ!?」 「ゆぐぼっ!?」 上空からの一撃によって地面に餡子の花を咲かせるゆっくりまりさとゆっくりありす。 ふらんが二匹を踏み潰したのだ。 「ゆっ、ありがとう。ふらん」 「ちょっと、ごめんね」 ふらんはれいむを持ち上げると小脇に抱えた。れいむが襲われないためにだ。 ふらんはれいむを小脇に抱えたまま、れいむに向かってくるゆっくりの大軍に向き直る。 「ゆっぐぢでぎないでいぶはぢねぇぇぇぇ!!!」 「くいーんのがだぎぃぃぃぃ!!!」 「ふらんをたおしてどすのもとにつれでいぐんだぜぇぇぇぇ!!!」 一斉にふらんに殺到するゆっくり達。 その数は虐殺お兄さん達が相手にしている者より数は少ないが、人間の子供ならばあっという間に飲み込む勢いだ。 その勢いを、ふらんは蹴りだけで止めた。 一番前列にいたゆっくり三匹を見事な蹴り技で仕留める。 餡子を吐き出しながら吹き飛ぶゆっくりの体が、更に後ろからやってくるゆっくりの勢いを止める。 更にふらんはその巻き添えを逃れたゆっくりの一匹を右手で掴むと、同じく逃れた一匹にぶつけて両者を潰した。 「ゆがぁぁぁぁ!! よぐもみょんをぉぉぉぉ!!!」 「かごめぇぇぇぇぇ!! みんなでいっせいにいぐんだぜぇぇぇぇ!!」 そんなふらんに対し虐待お兄さん達にしたように囲んで一斉に飛び掛るゆっくり達。 だがそれも無駄。 ふらんはその攻撃を飛んでやり過ごした。 「ゆぶぅぅぅぅ!! とぶなんてひきょうなん────ぜっ!?」 文句を言うゆっくりまりさを容赦なく上空からの踏み潰しで黙らせる。 そして他のゆっくりが襲いかかってくる前に上空へ退避。その際一匹のゆっくりを手に掴み、上空から爆撃の道具にする。 ヒットアンドアウェイ。空を飛べるとはそれだけで脅威なのだ。 ふらんも虐殺お兄さん達に負けず劣らずの活躍を見せる。そもそもクイーンありすを殺したのもふらんなのだ。 いくら捕食種とはいえゆっくりにしては異常なこの戦闘能力は、捕食種本来の身体能力に加えて、愛でお兄さんが一人で外にいても大丈夫なようにと施した英才教育の賜物である。 「う~、たべちゃんうだど~」 そこへ一匹の胴付きれみりゃが現れた。 目には目を。歯には歯を。捕食種には捕食種を。 だが、そんな安易な考えが更なる惨劇を生んだ。 捕食種は数が少ない。それもドゲスまりさの群れに属しているのは更に少ない。 この戦闘に参加しているのもわずか二十匹だ。それも大半は虐待お兄さん達に回っている。 この時ふらんに襲いかかったのは一匹だけ。愚かとしかいいようが無かった。 「ゆっ、そらをとべるれみりゃならふらんをたおせるね!」 「はやくこっちにおとしてね!!」 地面から胴付きれみりゃに声援を送るゆっくり達。だがそれは数秒後に阿鼻叫喚の地獄絵図となる。 「おそい」 ふらんは襲い掛かってくるれみりゃをかわすと、後方に回り込んでその羽をもぎ取った。 「う゛ぎゃぁぁぁぁ!? れ゛み゛り゛ゃのはね゛どらないでぇぇぇ!!」 千切ったのは片方だけ。だがそれでも激痛だ。 激痛によって動きが止まった瞬間、足でれみりゃの胴体を挟み込み、逃れられないようにする。 左手はれいむを抱えているので右手でれみりゃの腕を掴むと、そのまま引きちぎった。 そして千切った腕を地面に投げつける。それで一匹潰れた。 そのまま続けて頭、左腕、右足、左足、胴体と千切っては投げ千切っては投げを繰り返す。 地面にいて何もできないゆっくり達はただふらんの肉まん爆撃を受けるのみ。 ふらんはその光景を見届けると、上空にあるものを見つけ、れいむを抱えたままそっちに向かっていった。 大軍の一部は虐待お兄さんにも虐殺お兄さんにもふらん達にも向かわず、家に向かっていった。 戦闘開始前に家に愛でお兄さんが篭ったのを見たからだ。きっと弱いから逃げたに違いないと思っている。 そのため数十匹のゆっくり達がなんとか家に侵入しようと試みる。 だが扉は鍵がかけられていた。ゆっくりの体当たりで壊せるものでもないし、取っ手にももちろん届かない。 日本家屋と違って洋風の愛でお兄さんの家は窓が高い位置にあってそこから侵入も出来ない。 困り果てていたところへ胴無しれみりゃと胴付きれみりゃが来た。 「ゆっ、れみりゃ、これあけてっ!」 「まかせるんだど~」 扉が開かないのは取っ手のせいだと思ったゆっくりは、手のあるゆっくりゃなら扉を開けられるだろうと託した。 「う~? あかないんだど~?」 ガチャガチャと取っ手を鳴らすだけのれみりゃ。鍵がかかっているのだから当たり前。 人間の子供程度の腕力しか無いれみりゃが力づくで開けられるわけもなかった。 だが胴無しれみりゃは窓へ向かっていた。空を飛べるれみりゃなら高いところにある窓から入れるからだ。 窓は何故か開いていた。これならば楽に入れると胴なしれみりゃは判断し、窓から侵入を試みる。 「う~♪ たべちゃう────」 そこで言葉は途切れた。 何故か。 壊されることを恐れ窓は開けられていたが、そこには既に虐待お兄さん謹製のトラップ、ワイヤーが仕掛けられていたのだ。 何も知らず突撃したれみりゃは見事ワイヤーに切り裂かれ、バラバラ死体となって愛でお兄さんの家の中に落ちた。 「できればこっちには来て欲しくなかったなぁ」 家の中で紅茶を飲みながら、その光景を見ていた愛でお兄さんは嘆息した。 ふらんが見つけたのはうーぱっくの編隊だった。 実はこのうーぱっく、この大軍の主力の一角を担う戦力なのだ。 この編隊のうーぱっく全てに、拳大のものから漬物石クラスまで大小さまざまな石が詰め込まれている。 それを上空から投下する爆撃部隊なのだ。 全体的に非力なのがゆっくりなのだが、うーぱっくはこと運送においてはゆっくり随一の力持ちだ。 いくら虐待お兄さん、虐殺お兄さんといえど人間。上空から石の雨を降らされればただではすまない。 このうーぱっくの編隊が人里に爆撃を敢行すればそれだけのかなりの被害になるだろう。 だがこのうーぱっく。直接的な戦闘力は無いに等しいので、飛べる敵がやってきたらあっという間に壊滅する。 「ゆゆっ! ふらん、あのうーぱっくたちなにかしようとしてるよ!」 「うん、わかってる」 れいむを小脇に抱えたままふらんは加速する。 その速度はクイーンありすを殺した時に匹敵する。ふらんはその速度のまま、今にも石を投下しようとしていたうーぱっくの顔面に拳を叩き込んだ。 「うーーーーー!!??」 突然の攻撃に錯乱するうーぱっく。後続のうーぱっく達も半狂乱に陥っていた。 「ちょっと、ごめんね」 「ゆっ?」 「たかい、たか~い」 「ゆぅぅぅぅ!?」 突然ふらんはれいむを上空に放り上げた。すると両腕が自由になる。 その自由になった両腕で、ふらんはうーぱっくの両翼をもぎ取ると、うーぱっくの体を挟み込むようにして持った。 そしてそのまま、中身をぶちまけるように後続のうーぱっく達に向かって振るう。 その衝撃に堪えられず中身をぶちまけるうーぱっく。 ふらんによって後続のうーぱっく達に石のシャワーが襲い掛かった。 「うー!! うー!!」 「うぅぅぅぅ!?」 後続の中で戦闘にいたうーぱっくが一番その被害を受け、衝撃と痛みに堪えられず中身をこぼしてしまった。 その中身は本来の目標ではなく、下で戦っているゆっくり達に降り注いだ。 「ゆ゛うぅぅぅぅ!? なに゛ごれ゛ぇぇぇぇぇ!!」 「ゆぶべっ!」 「ゆごっ!」 「ゆぶびばっ!!」 「うーぱっぐ、なにじでるんだぜぇぇぇぇ!!」 人間ですら危ない石のシャワーに、ゆっくりが耐えられるわけもなく、次々と戦うことなく潰されていくゆっくり達。 ふらんは空になったうーぱっくでさっき放り投げたれいむをキャッチした。 「ごめんね」 「ううん、ふらんかっこよかったよ」 「……ありがと」 ふらんはそのままうーぱっく達に襲い掛かる。その猛攻に成す術もなくやられていくうーぱっく達。 さっさと石を投下すればいいじゃないか、と思うかも知れないが、今回爆撃の対象は少数。狙いを定めなければならない。 狙いを定めて投下しなければ味方に被害が出るため、そう簡単に落すことはできないのだ。 だがやはり数が多かった。 ふらんの魔の手を逃れ、ようやく虐殺お兄さん達に爆撃可能なうーぱっくが現れた。 もうすぐ狙いを定められる。 間に合わない。今まさに別のうーぱっくの翼を千切ったふらんはそう判断した。 距離が若干離れている。止めることができない。 「ゆっ! ふらん、れいむをなげて!」 「……え?」 「れいむもたたかうよ!」 その言葉の意味を察したふらんは、れいむを両手で持ち、頭の後ろまで振りかぶる。 そして全身をバネのようにして、うーぱっくに向かってれいむをスローイン。 ふらんとれいむの合体技。れいむミサイル。 弾丸のようにかっ飛ぶれいむは、見事にうーぱっくにぶつかった。 うーぱっくはその衝撃でボロボロと中身を零し、れいむは反動でふらんのほうへ跳ね返っていた。 ふらんはそのれいむを落さないようにしっかりとキャッチした。 「だいじょーぶ?」 「ゆへへっ、ちょっといたいけどだいじょうぶだよ」 制空権は、完全にふらんとれいむによって掌握された。 しまった! 槍を振るった後の僅かな隙を付かれた。 度重なる虐殺からの疲れか、隙を生んでしまった虐殺お兄さん。 今三匹のゆっくりが口に竹槍を咥え、その隙をついて襲い掛かっていた。 なんたる不覚。虐殺お兄さんは腹に力をこめて堪えようとするが、それは必要が無くなった。 上空から大小様々な石が降ってきて、今まさに襲いかかろうとしていたゆっくり達を押しつぶしたのだ。 「ゆべぇぇぇ!?」 「なんでぇぇぇ!?」 二匹は声を出すことができたが、体中から餡子が漏れ出ていて瀕死。一匹は即死だ。 なんだか知らんが助かった。 虐殺お兄さんは死に損ねた二匹を踏み殺すと気を引き締めた。 「虐殺お兄さん、疲れてるんじゃないんすかぁ!?」 「たわけ。そちらこそそろそろ疲れてきたのではあるまいか?」 「冗談。こちとらアドレナリン出まくりの脳汁出まくりで、疲れる余裕なんてないですよ!」 「全くだ! 私にとってこんな最高の舞台はない!」 背中合わせのままそれぞれ襲い掛かってくるゆっくりを返り討ちにしていく虐待お兄さんと虐殺お兄さん。 既に趨勢は決していた。千数百匹居たゆっくりの群れはその半数以上が死に、残りの半数も戦闘不能に陥っていた。 既に巣に逃げ帰ったゆっくりもいる。 いくらゆっくりといえど、これだけの数は脅威だ。 この数が人里に襲い掛かってくれば、ドゲスまりさ抜きといえどかなりの被害を受けていたはずだ。 だが虐待お兄さん達が圧勝できたのは何故か。 それは受けるべき被害が、人的被害ではないからだ。 人間ならばゆっくりにやられることは、あまりない。 だが襲い掛かってくるゆっくりを相手にしている間に、他のゆっくりが畑や家屋を襲う。 被害とはそのような被害だ。 だがこの場合、虐待お兄さん達が守るべきなのは己の体のみ。 愛でお兄さんの家はしっかりと施錠し中にもトラップがある。 つまり、他に守るべき対象がある戦いならば痛手を被っていただろうが、このような体と体のみのぶつかり合いや、人間がゆっくりに向かって攻める状況ならば殆ど人間側は被害を受けず圧勝できるのだ。 もっとも、たった二人でここまで壊滅させられるのは、この二人ぐらいだろうが。 「ゆぶぅぅぅぅ!? なんでかてないんだぜぇぇぇぇ!?」 信じられないというように大軍のリーダーのだぜまりさは叫んだ。運良く虐殺お兄さんと虐待お兄さんの魔の手から逃れたようだ。 だぜまりさの目は餡子まみれになった二人の暴君を捉える。その悪魔のごとき姿に恐れをなし、だぜまりさは逃げ出した。 「ゆゆゆっ!! おまえたちなんか、どすにかかればいちころなんだぜ! せいぜいくびをあらってまってるんだぜ!」 負け惜しみの捨て台詞を残し去って行っただぜまりさに続き、他の生き残ったゆっくり達も逃走を始める。 後に残されたのは死んだゆっくりの死骸か、虐待お兄さんが無力化し仲間にも見捨てられたゆっくりだけである。 「ゆぅ……ゆぅ……」 「なんで……おいでぐんだぜ……」 「いだいよぉぉぉぉ!! ゆっぐぢでぎないよ゛ぉぉぉぉ!!」 呻いたり泣き喚くゆっくり達を虐殺お兄さんが潰そうとするが、虐待お兄さんが慌てて「ちょっと、それは後で虐待するんだから殺さないで下さいよ」と止めに入った。 戦意のあるゆっくりがすべていなくなったところで、ふらんが空から降りてきた。うーぱっく達も全部殺すか追い払ったようだ。 ふらんは余裕綽々という顔をしていたが、れいむの顔は勝利の余韻に浸るでもなく、脅えていた。 「れいむ、どうしたんだ?」 心配になって虐待お兄さんが訊ねる。 れいむは脅え震えなかなか口を開かなかったが、やがて「どすが……」と呟いた。 どうやらドゲスまりさが出てくることを恐れているようだ。 なるほど、確かにドゲスまりさは脅威だ。正面からぶつかれば虐殺お兄さんも殺されかねない。 だが、 「安心しろれいむ。ドゲスまりさはもう死んでる」 つづく ─────────── あとがきのようなもの 今回は全編虐殺シーン 次でいよいよ完結です 完結シーンをいれるとwikiの容量オーバーになりそうだったので切りのいいところで分割しました これまでに書いたもの ゆっくり合戦 ゆッカー ゆっくり求聞史紀 ゆっくり腹話術(前)(後) ゆっくりの飼い方 私の場合 虐待お兄さんVSゆっくりんピース 普通に虐待 普通に虐待2~以下無限ループ~ 二つの計画 ある復讐の結末(前) ある復讐の結末(中) ある復讐の結末(後-1) byキノコ馬 このSSに感想を付ける
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・季節のイベントには乗っておくべきかと。 『ゆっくり向けの節分』 D.O 今日は節分の日。 幼稚園や小学校では豆まき行事が行なわれ、 商店でも軒並み、節分関連グッズが店頭に並ぶ。 そうは言ってもさすがに、一人暮らしのいい大人が自宅で、 ペット相手に豆をまいたり一緒に豆を食べたり、というほど面白い行事でもないのだが。 だが、今回舞台となる古い木造アパートの2階ではそんな、 涙無しには見ていられないことをやっていたりする連中がいた。 「はっはっはっはっは!!鬼は―外ー!!」 じゃららっ!!! 「ゆぴぃぃ!やめちぇにぇ!ゆっくちできにゃ『ぺしぺしっ!!』ゆぴぇ!」 2部屋と台所しかない室内で豆を投げているのは、Tシャツにトランクス姿のお兄さん。 一方家中追い掛け回されながら豆をぶつけられているのは、 生まれた直後に拾われ、約一ヶ月の間お兄さんに育てられてきた子れいむだ。 子れいむは理由がわからなかった。 拾われてから今までずっと、ゆっくりと育ててくれていたお兄さん。 今日はいいものをあげよう!と言ってくれたのは、ゆっくりすいか扮装セットだった。 子れいむはその、ゆっくりしたプレゼントに喜び、奥の部屋で子すいかに扮装した。 そして部屋から顔を出したと思ったら、いきなり硬い豆が飛んできたのである。 「はっはっはっはははははー!!鬼は―外ー!!鬼は―外ー!!」 じゃららっ!!! 「ゆぴぃぃ!やめちぇー!ゆっくちしちぇにぇ!ゆっくちしちぇぇぇええ!」 それから約10分後。 家中豆だらけになり、子れいむが逃げ疲れてぐずるだけになった頃、 豆まきは終わった。 「ゆぇ・・・ぅっくち・・・。」 「はっはは!すまんすまん!今日は節分だからな!ちょっとやりすぎた!はははは!!」 「ゆぅ?しぇつぶん?」 「ああ、節分だ!豆が悪い鬼を追い出んだ!すごいだろ!!」 「ゆぅ?おにしゃん?」 「すいかみたいな角の生えた、とっても悪いやつだ!はっはー!」 「おまめしゃん、しゅごーい!ゆっくちしちぇるにぇ!」 ぐずぐずと泣いていた子れいむも、どうやら豆をまくのは大事なことだ、 ということがわかり、すっかり笑顔になっている。 単純なものだ。 「そんなわけで、おうちの鬼は追い払った!次は体の中だな!ほれ!豆食え!」 「ゆぅ?むーちゃむーちゃしゅるの?」 「よくわからんが、歳の数だけ豆食ったら病気にならんとか、そんな感じらしい!ほれ!」 「ゆーん・・・れいみゅ、いくつたべりゅの?」 「うむ・・・ん?」 言われてみれば、この風習は人間向きのものだ。 子れいむは生まれてすぐに拾われたので生後何日かはわかる。 しかしそれでは数え年分の一粒しか食べられない・・・ 「うーん。そうだな。ゆっくりに人間の歳を当てはめるのもなんだ。よし!」 「ゆゆっ!?」 そういってお兄さんは、れいむの前に33粒の豆を置く。 「年でダメなら日数分でどうだ!はっはっはー!!」 「ゆ、ゆわーい!ゆっくちたくしゃんたべれりゅにぇ!!」 ・・・・・・。 「むーちゃむーちゃ、ちあわちぇー!」 「残さず食うんだぞ!」 「むーちゃむーちゃ、むーちゃむーちゃ・・・・」 ・・・・・・。 「ゆぎぇーぴゅ・・・まんぷきゅー・・・。」 所詮は子れいむ。 体のサイズの割には食べた方だが、まだ目の前には17粒の豆が残っていた。 「はっはっはっはっは!縁起ものだぞ!全部食え!」 「ゆ・・ぎゅ?むぎゅー!もぎょぎゅ・・・!」 だが、お兄さんは妥協を許さない。 子れいむを持ち上げると無理やり口を開かせ、さらに4粒、子れいむの頬にねじ込んだ。 「む、もごぎゅ。むー、ぢゅぁあ!!もうたべられにゃいよ!ゆっくちさせちぇにぇ!」 「ふーむ。しょうがないなー。」 そういうとお兄さんは、 ・・・さくっ! 手元にあった果物ナイフの刃を子れいむの額に水平に刺し、クルリと一周させた。 子れいむの頭頂部が、鍋の蓋のようにぱかっと剥がされる。 「ゆ・・・ゆびぃっ!?」 「ほら、全部食え食え!はっはは!」 ぐいっ!ぐいっ! お兄さんは、子れいむの頭にぱっくりと開いた傷口のど真ん中、 餡子の中央に豆をぐいぐいとねじ込んでいく。 「ゆ゛・・いぢゃい!いぢゃ・・・ぎゅぴぃ・・!!」 皮の近くにねじ込んではいないので、 見た目は子れいむの体が、風船のように膨張していくだけだ。 しかし、当の子れいむは強烈な痛みを伴う異物感を味わっているので、 自分の体に行なわれている事が、ただ事ではないことを理解する。 「ゆびっ!・・・ぴぃ・・ゆぎゅ!おにいぢゃ!やべぢぇっ!」 「はっはっは!遠慮するな!もうすぐ全部入るからな!はっはー!」 そして、子れいむの体積がソフトボールサイズからハンドボールサイズに近くなった頃、 33粒の豆は全て、子れいむの中に納まったのであった。 「く、くるちいよぉ・・う、うんうん・・・ぢゅるよぉ・・・」 切り開いた頭もしっかり元通り閉じた。 成長したわけでもないのに、これだけ体積が増えたのだから、 体内にかかる圧力は、子れいむをゆっくりさせないのに、充分すぎるほど。 こうなると、食べ過ぎたときと同様、当然出るものが出てくる。 「はっはっは!こらこら!せっかく食べさせたのに、いきなり出すなよ!」 「しょ、しょんにゃこといっちぇも・・・」 そんなことを離している間にも、子れいむのあにゃるは勝手に開き始め、 茶紫色のにくいヤツが顔を出そうとしていた。 「ふむ、よし!しょうがない!これをやろう!」 そう言ってお兄さんが取り出したのは、 トイレットペーパーの芯より少し細い、かっぱ巻きサイズの恵方巻き。 「ふぅーむ!お前用に作ってた恵方巻きだったがしょうがない!・・・そらっ!」 ぐぬっ! 「ゆぴゃぁぁああ!!れいみゅのあにゃるしゃんぎゃぁぁあ!!」 「はっはっは!まあ、上から食うのも下から食うのも、お前達なら変わらんだろ!」 「しょ、しょんなわけにゃいぃぃいいい!!」 「ほら、抜きたきゃ全部食えよ!ははははは!!」 そういうと、お兄さんは長さ30cm以上ある特製恵方巻きの、 あにゃるに刺さっている方の反対側の端っこを、子れいむの口にねじ込んでやった。 「もぎゅ・・・ぎゅぴゅ・・・ぴ・・・・」 「おお、こんな時間だ!じゃ、おやすみ!れいむ!ははははははははははははは・・・・」 こうして、お兄さんはやりたい放題やった後、 子れいむを放置して隣の部屋に行ってしまった。 「むぎゅ・・・ぴぅ?きゅぴぅ・・・?」 子れいむには、お兄さんがなぜ、どうしてこのような目に自分を遭わせるのか、 最後まで全く理解できなかった。 どうして? どうして? ・・・ドウシテ? ただ、一つだけ理解していることがあった。 うんうんを出すためには、この恵方巻きを引き抜くしかない。 しかし、体内はあんよも動かせないほどパンパン。 体を振って引き抜くことが出来ず、ゆっくりには手も足も無い。 子れいむが恵方巻きを引っ張る方法は一つしかなかった。 ・・・翌日、お兄さんが目を覚ますと、 子れいむは、弾けたあにゃるから餡子をだらしなくひり出し、 半分ほど食べ終わった恵方巻きを恨めしそうに眺めたまま息絶えていた。 ※胴付きすいかのおまめちゃんを食べてあげよう的なネタは これっぽっちも思い浮かびませんでした。 餡小話掲載作品(またちゃんと整理します。) 『町れいむ一家の四季』シリーズ 前日談 ふたば系ゆっくりいじめ 522 とてもゆっくりしたおうち ふたば系ゆっくりいじめ 628 ゆきのなか ふたば系ゆっくりいじめ 753 原点に戻ってみる ふたば系ゆっくりいじめ 762 秋の実り 『町れいむ一家の四季』シリーズ(ストーリー展開順・おまけはそうでもない) 春-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 161 春の恵みさんでゆっくりするよ 春-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 154 竜巻さんでゆっくりしようね 春-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 165 お姉さんのまりさ飼育日記(おまけ) 春-2-3. ふたば系ゆっくりいじめ 178 お姉さんとまりさのはじめてのおつかい(おまけ) 春-2-4. ふたば系ゆっくりいじめ 167 ちぇんの素晴らしきゆん生(おまけ) 春-2-5. ふたば系ゆっくりいじめ 206 町の赤ゆの生きる道(おまけ) 夏-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 137 真夏はゆっくりできるね 夏-1-2. ふたば系ゆっくりいじめ 139 ゆっくりのみるゆめ(おまけ) 夏-1-3. ふたば系ゆっくりいじめ 734 未成ゆん(おまけ) 夏-1-4. ふたば系ゆっくりいじめ 678 飼われいむはおちびちゃんが欲しい(おまけ) 夏-1-5. ふたば系ゆっくりいじめ 174 ぱちぇと学ぼう!ゆっくりライフ(おまけ) 夏-1-6. ふたば系ゆっくりいじめ 235 てんこのインモラルスタディ(おまけ) 夏-1-7. ふたば系ゆっくりいじめ 142 ゆうかりんのご奉仕授業(おまけ) 夏-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 146 雨さんはゆっくりしてるね 夏-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 205 末っ子れいむの帰還 秋-1. ふたば系ゆっくりいじめ 186 台風さんでゆっくりしたいよ 秋-2. ふたば系ゆっくりいじめ 271 都会の雨さんもゆっくりしてるね 冬-1. ふたば系ゆっくりいじめ 490 ゆっくりしたハロウィンさん 『町れいむ一家の四季』シリーズ 後日談 ふたば系ゆっくりいじめ 132 俺の嫁ゆっくり ふたば系ゆっくりいじめ 148 ここはみんなのおうち宣言 ふたば系ゆっくりいじめ 224 レイパーズブレイド前篇(仮) ふたば系ゆっくりいじめ 249 Yの閃光 ふたば系ゆっくりいじめ 333 銘菓湯栗饅頭 ふたば系ゆっくりいじめ 376 飼いゆっくりれいむ ふたば系ゆっくりいじめ 409 町ゆっくりの食料事情 ふたば系ゆっくりいじめ 436 苦悩に満ちたゆん生 ふたば系ゆっくりいじめ 662 野良ゆっくりがやってきた ふたば系ゆっくりいじめ 807 家出まりさの反省 その他(舞台設定のみ共有) ふたば系ゆっくりいじめ 157 ぱちゅりおばさんの事件簿 ふたば系ゆっくりいじめ 305 ゆっくりちるのの生態 ふたば系ゆっくりいじめ 854 ごく普通のゆっくりショップ 本作品 挿絵:全裸あき